改訂新版 世界大百科事典 「労働強度」の意味・わかりやすい解説
労働強度 (ろうどうきょうど)
一定時間内における労働給付量の大きさをいい,労働時間が労働給付量の外延的大きさを表すのに対し,その内包的大きさを表すものである。時間賃率の場合,労働強度の強化は労務費の削減につながり,また労働時間の延長は機械設備の稼働率を高め,その償却を早めるため,資本主義的企業においては労働時間の延長と労働強度の強化への誘因がつねに働くといってよい。労働者階級の抵抗などもあって労働時間は歴史的に徐々に短縮されつつあるため,企業は出退勤管理の厳正化などによる実際作業時間の増大をはかったり,経営工学(IE)的手法の適用による合理的な労働力の活用や,コンベヤシステムの導入などの生産・工程管理の合理化による労働強度の標準化・強化をはかっている。だが労働強度の強化が労働時間の短縮を伴わずに進められると,労働者の肉体的・精神的疲労が蓄積され慢性化することになり,結局,労働生産性が低下し労働災害率も高まるおそれがある。
執筆者:中村 圭介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報