日本大百科全書(ニッポニカ) 「動物の保護・収容」の意味・わかりやすい解説
動物の保護・収容
どうぶつのほごしゅうよう
動物の保護・収容ということばは法令上の文言ではなく、1950年(昭和25)制定の、狂犬病予防法に基づき使われた、野犬等の「捕獲・抑留」という文言に対し、1973年(昭和48)に「動物の保護及び管理に関する法律」(昭和48年法律第105号。1999年改正により「動物の愛護及び管理に関する法律」に改称)の制定をうけて、動物愛護の立場から使用されている一般用語である。
日本における「動物の保護・収容」には、人の管理下に置かれた動物にかかわるものと、野生の動物にかかわるものがある。人の管理下に置かれた動物については、法令に基づくものとして、「動物の愛護及び管理に関する法律」により、放し飼いの犬、迷い犬、遺棄された犬、および公共の場所において病気や負傷している犬、ねこ、その他の小動物で飼い主が不明のものについては、動物愛護と人への危害防止の観点から都道府県等によって「保護(法律上の文言は「引取り」)・収容」されることとなっている。保護・収容された犬・ねこ等は、飼い主が判明すれば飼い主に返還され、その他のものは一定期間(各自治体が条例によって定める日数)収容の後、飼養を希望する人に譲渡されるか安楽死処分される。
そのほかに遺失物法(平成18年法律第73号)に基づく準遺失物(逸走の家畜)として拾得者が警察署長に提出し、保護・収容される場合もある。この場合の対象動物は犬、ねこに限らず家畜(人の管理下に置かれたと考えられる動物)のすべてが対象となる。準遺失物として届け出された動物は、警察署長によって動物の種類、特徴、拾得日時および場所などの公告が行われた後、2週間以内に遺失者が現れない場合、その動物を拾得し届け出た人に飼養をゆだねるなどの方法で処分をすることができる。さらに、3か月が過ぎても遺失者が現れない場合、その動物は拾得者の所有とすることができる。なお、警察署長に届けられた犬・ねこ等は、届け出た人の申し出により「動物の愛護及び管理に関する法律」を適用し、都道府県等に引取りを求めることもできる。
野生動物にかかわるものは、各都道府県に病気やけがをした野生の動物を保護・収容するための施設として鳥獣保護センター等があり、治療などの必要措置を行った後で野生に戻す取組みが行われている。
[池澤聖明]