アルゴン(読み)あるごん(英語表記)argon

翻訳|argon

デジタル大辞泉 「アルゴン」の意味・読み・例文・類語

アルゴン(〈ドイツ〉Argon)

希ガス元素の一。単体は不活性の無色・無臭の気体。白熱電球充塡じゅうてんガス、溶接用ガス、蛍光ランプの放電用気体などに用いる。元素記号Ar 原子番号18。原子量39.95。

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精選版 日本国語大辞典 「アルゴン」の意味・読み・例文・類語

アルゴン

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Argon ) 希ガス元素の一つ。記号 Ar 原子番号一八。無色、無臭の気体。空気中に〇・九三三パーセント存在する。赤色ランプ、蛍光灯、白熱電球、真空管整流管などの充填(じゅうてん)ガス、各種金属製錬に不活性ガスなどとして用いられる。
    1. [初出の実例]「あの所は表通りよりも却ってネオンやアルゴンのサイン燈に眩ゆく」(出典:舗道雑記帖(1933)〈高田保〉銀座雑記帳)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルゴン」の意味・わかりやすい解説

アルゴン
あるごん
argon

周期表第18族に属し、希ガス元素(貴ガス元素)の一つ。原子番号18、元素記号Ar。空気から化学反応によってその成分を除いていくと最後に化学反応性のない不活性気体が残ることは、18世紀すでにイギリスのキャベンディッシュが気づいていた。1894年レイリーラムゼーは、空気から酸素を除いて得た窒素の比重が、窒素化合物を分解して得た窒素の比重より大きいことに着目しアルゴンを分離した。アルゴンはそれまで知られていた元素と異なり、化学反応性をまったく示さなかったことから、ギリシア語で不活性を意味するargosあるいは働かないという意味のan ergonから命名された。通常の空気中には、体積で0.933%、質量で1.285%存在する。地殻中のカリウム40が放射壊変してアルゴン40となるため、地殻中にも存在する。液体酸素液体窒素製造プラントから分留、精留、化学処理によって精製アルゴンがつくられ、希ガス(貴ガス)単体としてはもっとも大量かつ安価に生産されている。電球、蛍光灯、放電管などの封入ガス、金属の精錬、鋳造、溶接における保護ガス、不安定化学物質の保護ガス、ガスクロマトグラフィーの輸送用ガスとして用いられる。低圧放電管では圧力によって色が変わり、赤色および青色のネオンサインに使われる。水和物結晶8Ar・46H2Oや、キノール分子化合物Ar・3C6H4(OH)2のような包接化合物以外には安定な化合物をつくらない。

[岩本振武]



アルゴン(データノート)
あるごんでーたのーと

アルゴン
 元素記号  Ar
 原子番号  18
 原子量   39.948
 融点    -189.35℃
 沸点    -185.85℃
 密度    気体 1.7834g/L(0℃,1気圧)
       液体 1.402g/cm3(-185.85℃)
 結晶系   固体 立方
 元素存在度 宇宙(Si106個当りの原子数)
          2.28×105(第11位)

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化学辞典 第2版 「アルゴン」の解説

アルゴン
アルゴン
argon

Ar.原子番号18の元素.電子配置[Ne]3s23p6の周期表18族希ガス元素.原子量39.948(1).40Ar99.6003(1)%,38Ar0.0632%,36Ar0.3365% からなり単核種に近い.質量数30~53までの放射性核種が知られている.1894年,W. Ramsay(ラムゼー)とJ. Rayleighによって発見され,不活性なところから怠け者を意味するギリシア語αργοσをとって命名された.大気の9340体積 ppm を占める.火星の大気中にも1.6%Arが含まれる.液体空気の分留によって単体が得られる.精製は,分留の反復,アルカリ金属との加熱(窒素,酸素の除去),活性炭による分別吸着,分別蒸発,ガスクロマトグラフィーによって精製される.無色,無臭の気体.融点83.8 K(-189.3 ℃),沸点87.28 K(-185.87 ℃).臨界点150.86 K(-122.3 ℃).4.898 MPa(48.35 atm).13.41 mol L-1(0.5356 g mL-1).三重点87.78 K.液体の密度34.93 mol L-1(1.393 g mL-1)(沸点).蒸発熱6.516 kJ mol-1(沸点).第一イオン化エネルギー1520.4 kJ mol-1(15.760 eV).化学的には不活性である.ヒドロキノンと[C6H4(OH)2]3・0.67Ar,水と6H2O・Arの包接化合物をつくる.アーク溶接チタン,半導体用ケイ素,ゲルマニウム結晶製造の際の不活性雰囲気,白熱電球,蛍光灯充填ガスとして用いられる.液体は高エネルギー物理学用検出器の媒質に使われる.[CAS 7440-37-1]

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改訂新版 世界大百科事典 「アルゴン」の意味・わかりやすい解説

アルゴン
argon

周期表第0族に属する希ガス元素の一つ。1894年イギリスのレーリー卿は,空気から酸素を除いて得た窒素が,窒素化合物を分解して得られる窒素より重いことを示し,さらにイギリスのW.ラムゼーが空気から新たな気体物質を分離して取り出し,そのスペクトルからこれが新元素であることを示した。それまでに知られていた元素とは違い,化学的にきわめて不活性で,化合物をつくらないことから,ギリシア語のa-ergon(働かない)にちなんでアルゴンと命名された。空気中に体積で0.933%,重量で1.285%含まれ,また地殻中にもカリウム40(40K)が壊変して生ずる40Arが存在する。化合物をつくらず,つねに単体として存在する。単原子分子からなる無色,無臭の気体で,減圧下で放電すると特徴のある発光スペクトルを示す(3mmHgで赤色811.35nm,さらに減圧下では青色434.8nmが強い)。冷却した水とは水和物結晶Ar・5.75H2O,ヒドロキノンとはAr・3C6H4(OH)2のような結晶のクラスレート化合物をつくる。液体空気の分留によって粗アルゴンを得,精留,化学処理によって残留する酸素と窒素を除去し,ボンベにつめて市販されている。ネオンサイン(赤色および青色),電球,蛍光灯,放電管などの封入ガスとして,また金属の精錬,溶接などでの保護ガスとして広く用いられる。化学実験用としては,不安定物質の保護用,ガスクロマトグラフの輸送用ガスとして用いられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルゴン」の意味・わかりやすい解説

アルゴン
argon

元素記号 Ar ,原子番号 18,原子量 39.948。周期表 18族,希ガス元素の1つ。天然には安定同位体アルゴン 40 (存在比 99.6%) ,36 (0.337%) ,38 (0.063%) が存在する。原子炉付近の空気中には放射性同位体アルゴン 41 (半減期 110分) が検出される。空気中の存在量 0.93%,クラーク数 4×10-4 。宇宙にも存在する。包接化合物などの存在が知られるが化学的には不活性。無色,無臭の単原子気体で,密度 1.7834 g/l (0℃,1気圧) ,融点-189.2℃,沸点-185.87℃,臨界温度-122.4℃。水,有機溶媒に可溶。アルゴン 40はカリウムを含む鉱物中に生成し,カリウム 40との相対量から鉱物生成の地質学的年代が計算される。赤色放電管,白熱電球,真空管の封入ガス,金属製錬用不活性ガスなどとして利用される。

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百科事典マイペディア 「アルゴン」の意味・わかりやすい解説

アルゴン

元素記号はAr。原子番号18,原子量は39.948。融点−189.2℃,沸点−185.86℃。希ガス元素の一つ。無色無臭の気体。1894年レーリーとラムゼーが空気中の窒素から分離発見。ギリシア語argos(怠けものの意)にちなんで命名。きわめて不活性で通常の化合物をつくりにくい。水とはクラスレート化合物Ar・6H2Oの結晶をつくる。各種電球,真空管などの封入ガスおよび溶接・精錬などでの保護ガスとして使用。
→関連項目タングステン電球点灯管

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