医療関係法について

内科学 第10版の解説

医療関係法について(内科学総論)

 医療は常に侵襲性を伴うこと,そしてその専門性がきわめて高く,医師と患者には大きな情報の較差が存在すること,さらには,医師は患者の個人情報を知る立場にあることなどから,社会と患者の安全と利益を守る視点から,医師の行動規範が医療関係法によって厳しく規定されている.その内容から,医療関係法は次のように3領域に大別される.すなわち,まず医療関係者や医療施設に関する法規として,医師法や医療法,そして罰則を記した刑法などがある.次に住民をおもに対象とした保健や疾病予防についての法規として,予防接種法,母子保健法,地域保健法や感染症予防と医療に関する法規などがある.さらに,福祉と介護に関する法規として,身体障害者福祉法や障害者自立支援法などがある.その中で,診療の現場に関連の深い,医師法第21条と感染症法について述べる.
 医師法第21条は,「医師は,死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定している.この規定は,死体は重大な犯罪の証拠となる可能性があることから,死亡診断に立ち会う機会の多い医師に対して,警察の行政目的のために届出義務を課したものである.しかし,最近医療事故が発生した場合に,診療行為における過失致死などの罪責を問うための法的根拠として適用されることがあり,医療関係者,特に救急医療を担う医師から医師法第21条の在り方についての疑義が訴えられ,廃止を含めた検討が行われている. 感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)は,最近のわが国の国際化により,遠隔地で発生した新興感染症が数日の時間差で伝播してくる可能性が高くなった.さらに結核などの感染症が人口の高齢化により再興してくることも危惧されている.そこで,総合的な感染症予防対策を推進するために,入院,検疫などの措置の対象となる感染症の種類を見直すとともに,入院措置となる患者への説明など手続きに関する規定を設け,また結核などの再興感染症の予防などについての規定を整備するために,2007年に改正され実施されている.[矢﨑義雄]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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