十六島(読み)うっぷるい

精選版 日本国語大辞典 「十六島」の意味・読み・例文・類語

うっぷるい【十六島】

  1. 〘 名詞 〙 海藻うっぷるいのり(十六島海苔)」の略。
    1. [初出の実例]「吸物 うそて、柚、十六島、冷物 はす」(出典:鈴鹿家記‐応永六年(1399)六月一六日)

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日本歴史地名大系 「十六島」の解説

十六島
じゆうろくしま

東村東部および千葉県佐原市北部の低地に散在する旧一六ヵ村の総称

天正一八年(一五九〇)徳川家康の関東転封時、下総国は香取海かとりうみを境として北は常陸の佐竹氏領に接していたので、境界水域の沖之おきの島は徳川・佐竹両氏の紛争地となったと伝える。そこで徳川氏の小見川おみがわ(現千葉県香取郡)代官吉田佐太郎は、旧江戸崎えどさき(現江戸崎町)城主土岐氏の家臣石田駿河守から提出された堆洲開拓の申請に基づき、家康の許しを得て、次のとおり新田開発を許可したという。「沖嶋北はす新田之儀、何程成共精を入、ひらかせ可申候、御年貢之儀、古より御定のことく三ケ年不入ニ相定申候」(「新田開発認可状」山来家文書)。またこの開発地は同年四月の徳川家康黒印状写(同文書)に「下総国香取郡之内ニおゐて新嶋起立の事、此節一段ニ候、為此歓諸役免許、新嶋と名つけ、永々守護不入者也」とあるように家康によって新島しんしまと名付けられた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十六島」の意味・わかりやすい解説

十六島
じゅうろくしま

千葉県北東部から茨城県南部にまたがる利根川下流の干拓地。香取市神崎町稲敷市に広がる。天正 18 (1590) 年江戸崎城主土岐氏の家臣,石田主馬亮が干拓を申請,着手より約 50年を要して完成した。利根川の前身,常陸川と霞ヶ浦に挟まれた低湿地に 16の新田 (上之島,結佐〈けっさ〉,中島,松崎六角長島,西代,大島,三島,境島,扇島,中洲,加藤洲,八筋川,磯山,卜杭〈ぼっくい〉) を造成したためこの名がある。低湿地のため,水田地帯には輪中が形成されている。早場米の産地として有名。水郷筑波国定公園に属し,観光客が多く,加藤洲十二橋は水郷情緒に富む名所。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十六島」の意味・わかりやすい解説

十六島
じゅうろくしま

千葉県北部、利根(とね)川下流低地にある香取市(かとりし)の一地区。かつて香取海(かとりうみ)が深く湾入していたが、江戸時代に利根川の河道が銚子(ちょうし)方向へと変えられ、低湿地が形成された。1590年(天正18)に帰農した武士団が上之島(かみのしま)の新田開発を行い、以後1640年(寛永17)までに西代(にししろ)、八筋(やすじ)川、長島、六角、三島、大島、扇(おうぎ)島、境島、卜杭(ぼっくい)、加藤洲(かとうず)、結佐(けっさ)、中島、松崎、中洲(なかず)、磯山(いそやま)を開拓して十六島とよばれるようになった。江戸幕府が常陸(ひたち)佐竹藩領との境界防御を意図して新田を開かせたといわれ、集落は常陸利根川と横利根川沿岸の微高地上に島状に分布し、島の地名が多い。1957年(昭和32)に利根川特定地域総合開発事業の一環として、一帯の干拓、土地改良が進められ、早場米の産地として生産性を向上させた。

[山村順次]


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世界大百科事典(旧版)内の十六島の言及

【平田[市]】より

…明治末に開通した山陰本線が平田を通らなかったため,商業機能も今市(出雲市)に中心が移った。日本海側には小伊津,十六島(うつぷるい)などの漁村が多く,十六島はノリの産地で知られる。また,中海新産業都市の一部に指定されたことから,企業誘致も進められている。…

【水郷】より

…利根本流,横利根川,北利根川,霞ヶ浦,外浪逆浦(そとなさかうら),北浦の沿岸に広がり,水郷筑波国定公園に指定されている。古代には香取海といわれた流海で,中世に利根川水系の堆積作用で沖之島などの川中島が形成され,近世初期の利根川の河道付け替え以後急速に陸化が進み,十六島(じゆうろくしま)などの新田開発が進展した。水郷の中心の十六島はかつてはエンマという水路が縦横に掘られ,灌漑,排水路として,また交通路として利用された。…

※「十六島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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