落語。別名を「百人一首」というが、もとは『竜田川(たつたがわ)』という上方咄(かみがたばなし)で、初代桂(かつら)文治の作。知ったかぶりの横町の隠居が「千早振る神代(かみよ)もきかず竜田川からくれないに水くくるとは」という百人一首の歌の意味を八五郎に聞かれ、隠居は口から出任せに以下の物語を展開する。竜田川という大関が千早という花魁(おいらん)に惚(ほ)れたが振られ、妹女郎の神代もいうことを聞かないので「千早ふる神代もきかず竜田川」。失望した竜田川は帰郷して豆腐屋になり、10年後、女乞食(こじき)が卯(う)の花(おから)をくれといったのでやろうとすると、それが千早のなれの果て。竜田川は怒っておからをやらず、恥じた千早が井戸へ身を投げて死んだので「からくれないに水くぐるとは」。八五郎が最後の「とは」の意味を聞くと、「とはは千早の本名だ」とサゲる。『やかん』と同工異曲の無学者は論に負けずという咄で、「無学者」「無学者論」という別名もある。
[関山和夫]
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