「寸松庵(すんしょうあん)色紙」「継(つぎ)色紙」とともに三色紙の一つ。清原深養父(きよはらのふかやぶ)の家集『深養父集』の断簡。もとは冊子(さっし)本。一葉の形が縦14センチメートル、横12センチメートルの方形であるところからこの名がある。白あるいは薄藍(うすあい)の鳥の子に細かい雲母砂子(きらすなご)を一面にまいた料紙に、一葉に一首ないし二首を大胆に散らし書きしたもの。線の細太、潤渇の変化が著しく、また筆の弾力を巧妙に利用した筆線は、優婉(ゆうえん)な情趣にあふれ、藤原行成(ゆきなり)の手になると伝称するが、それよりも遅く、平安時代の11世紀後半の書写。なお、随所にみえる集付けや引き点は、藤原定家の筆であり、分断される以前、冊子本として定家に所蔵された歴史を物語っている。
[尾下多美子]
『小松茂美監修『日本名跡叢刊51 升色紙』(1981・二玄社)』
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…書写当時のままの完本は巻第五・八・二十の3巻のみで,他は分断され,諸家に分蔵されている。平安時代の三色紙と呼ぶ継色紙・寸松庵色紙・升色紙(ますしきし)も,本来は冊子本の歌集であったが,一首ごとに切り放して表具されている。継色紙は小野道風筆と鑑定されているが,書風はほぼ道風時代(10世紀中ごろ)と推定され,高野切よりは古体に属するものである。…
… 古筆切につけられた名称は,一つの巻物がいくつかに切断され,各所に分蔵されるに至った場合,もとは同じものであることを認識する必要から固有の通称がつけられるようになったもので,もとの所蔵者,伝来の地名,字すがた,料紙などの特徴にちなんで名づけられる。例えば,所蔵者の名をつけたものには本阿弥光悦の愛蔵した伝小野道風筆《古今集》断簡の〈本阿弥切〉などがあり,伝来の地名を冠したものは〈高野切〉〈本能寺切〉など,字すがたによるものは伝藤原佐理筆〈紙撚(こより)切〉〈針切〉など,料紙の特徴にちなむものに伝藤原行成筆〈升色紙〉,伝小野道風筆〈継色紙〉,伝紀貫之筆〈寸松庵色紙〉などがある。 現存する古筆切は約500種類に及んでいる。…
※「升色紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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