古筆の一つ。縦・横13cmほどの正方形の紙(斐紙(ひし)の白,紫,藍,黄などの染め紙)を2枚継ぎ,それにおおむね1首の和歌を書したもので,上の句が1紙,下の句が次の1紙に書かれていることが多い。しかし,これはいわゆる色紙ではなく,升形の粘葉(でつちよう)本を切ったものである。もとの本は《万葉集》《古今集》に見える古歌を集めて部立てした私撰集であったらしいが,題,作者を記すことがないので,歌書としてよりは書芸として書かれたものと思われる。1首の半分ずつを各1紙に書くので別名〈半首切〉とよばれ,さらに〈木乃葉色紙〉も同品であるという。余白がゆたかで,短く切って散らし書きにされた和歌は,おもしろいリズムを生じている。古来の鑑定では小野道風筆とされているが,実際は下って院政期の書であろう。寸松庵色紙,升色紙とあわせて三色紙といわれる。
執筆者:田村 悦子
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平安中期に書写された歌集の断簡。もとは粘葉(でっちょう)装の冊子(さっし)本。素紙・紫・代赭(たいしゃ)・緑・藍(あい)・黄の染紙(そめがみ)(13.6センチメートル×26.6センチメートル)を二つ折りにした見開きに和歌一首を散らし書きで書く。なかには下(しも)の句を次の見開きに書写した部分があり、一首分を掛幅に仕立てる際、左右の料紙の色が変わるところから継色紙という。現在36首分が確認されており(『古今集』29首、『万葉集』6首、出典不明1首)、それらを収めた未詳歌集を書写したもの。簡略な女手(おんなで)と万葉仮名の草体を巧みに織り交ぜ、散らし書きの手法も巧妙を極める。小野道風筆と伝えるが確証はなく、10世紀後半の書写と推定される。『寸松庵(すんしょうあん)色紙』『升(ます)色紙』とともに三色紙の一つ。
[久保木彰一]
『『日本名跡叢刊50 継色紙』(1981・二玄社)』
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…書写当時のままの完本は巻第五・八・二十の3巻のみで,他は分断され,諸家に分蔵されている。平安時代の三色紙と呼ぶ継色紙・寸松庵色紙・升色紙(ますしきし)も,本来は冊子本の歌集であったが,一首ごとに切り放して表具されている。継色紙は小野道風筆と鑑定されているが,書風はほぼ道風時代(10世紀中ごろ)と推定され,高野切よりは古体に属するものである。…
… 古筆切につけられた名称は,一つの巻物がいくつかに切断され,各所に分蔵されるに至った場合,もとは同じものであることを認識する必要から固有の通称がつけられるようになったもので,もとの所蔵者,伝来の地名,字すがた,料紙などの特徴にちなんで名づけられる。例えば,所蔵者の名をつけたものには本阿弥光悦の愛蔵した伝小野道風筆《古今集》断簡の〈本阿弥切〉などがあり,伝来の地名を冠したものは〈高野切〉〈本能寺切〉など,字すがたによるものは伝藤原佐理筆〈紙撚(こより)切〉〈針切〉など,料紙の特徴にちなむものに伝藤原行成筆〈升色紙〉,伝小野道風筆〈継色紙〉,伝紀貫之筆〈寸松庵色紙〉などがある。 現存する古筆切は約500種類に及んでいる。…
※「継色紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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