半畳(読み)ハンジョウ

デジタル大辞泉 「半畳」の意味・読み・例文・類語

はん‐じょう〔‐デフ〕【半畳】

たたみ一畳の半分。また、その畳。
江戸時代芝居小屋などで観客が用いた一人用の小さな敷物。また、その賃貸を業とした「半畳売り」の略称
芝居で、見物人役者に対して投げる非難からかい言葉。転じて、人の言動を茶化したりやじったりする言葉。「半畳を言う」

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精選版 日本国語大辞典 「半畳」の意味・読み・例文・類語

はん‐じょう‥デフ【半畳・半帖】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一畳の半分。また、その大きさの畳。
    1. [初出の実例]「半畳玖拾参枚」(出典:法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. 「はんでうしきて、上に御円座(わらうだ)重ねて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)玉のうてな)
  3. 芝居小屋などで、見物人に貸し賃を取って貸す、一人分の小さなござ、敷物。
    1. [初出の実例]「火なわのよりよりにきこゑはんてうのかずかずに見え侍れども」(出典:評判記・野郎大仏師(1667‐68)吉田玉之丞)
  4. 芝居の見物人が出す掛け声野次。また転じて、相手をからかったりまぜかえしたりすることば。
    1. [初出の実例]「首尾よく落選してゐたお庇(かげ)高見の見物で半畳を云ってゐられる」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉失意政治家)
  5. はんじょううり(半畳売)」の略。
    1. [初出の実例]「惣座中は申におよばず、木戸半畳(ハンジャウ)、やぐらだいこを打ます、小ぼうず迄が」(出典:浮世草子傾城色三味線(1701)鄙)

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改訂新版 世界大百科事典 「半畳」の意味・わかりやすい解説

半畳 (はんじょう)

江戸期の劇場の土間席で観客が用いた敷物,またこれを賃貸する〈半畳売り〉の略語。半畳は畳表へ布地を貼った粗末なもので,賃貸料は貞享年間(1684-88)で5文,1803年(享和3)に10文。〈半畳を入れる〉〈半畳を打ち込む〉という通語は,俳優の演技などに不満・反感を表現する際,観客がこの敷物を舞台に投げる行為から起こった。半畳売りは観客の勧誘やその他大道具手伝いなど劇場雑務を兼任し,火縄売りとともに〈声番〉が任務にもなっていた。声番は助六の花道の出に〈助六様ァ,団十郎様ァ〉などと賞める役職。半畳売りの溜りは揚幕のそばにあった。
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