内科学 第10版 「単心室」の解説
単心室(その他の先天性心疾患)
定義・頻度
単心室の定義は一様ではないが,ここでは主たる心室に両方あるいは単一の房室弁もしくは共通房室弁が挿入するものを考える.主心室の解剖学的形態,付属する痕跡的心室の有無,房室弁形態によって分類されるが,1000出生に対し0.1061人の発生である(三尖弁閉鎖を除く).サブタイプとして①低形成左室を伴う/伴わない右室型単心室群,②低形成右室を伴う/伴わない左室型単心室群,③心室タイプ非確定群,に分けられる.多くは大血管の位置異常や形態異常を合併する.
発生機序
一側心室の低形成,一側房室弁閉鎖,房室中隔の接合異常,心室中隔の低形成などが推定される機序である.
血行動態
主心室が肺静脈還流・体静脈還流の両者を受け取り,また肺動脈・大動脈両者への血流供給を担う.肺循環系体循環系は併存し,始点終点が単心室となっている.肺血流の増減,静脈還流障害の有無,房室弁逆流の有無などによって血行動態は左右されるが,最大の決定因子は肺血流量である.
徴候・診断
肺血流減少群ではチアノーゼが,肺血流増加群では努力性呼吸,哺乳困難,体重増加不良などの心不全徴候が主体となる.いずれの場合にも肺動脈への流出雑音が聴取される.形態診断はエコー,CT,MRIで非侵襲的に可能であるが,修復の判断には肺動脈圧,肺血管抵抗測定が必要であり,そのためには心カテーテルを要する.
管理・治療
左室型単心室の一部(double inlet LV)では心室中隔作成により2心室修復が行われることがあるが,ほとんどはFontan手術が機能的修復の目標となる.そのために十分に低い肺動脈圧,肺血管抵抗,良好に発達した肺動脈形態,良好な心室収縮,軽度までの房室弁逆流を保つ必要がある.肺血流減少群では過大とならない体肺動脈短絡術,肺血流増加群では肺動脈絞扼が行われる.[山田 修]
■文献
Julsrud PR, Weigel TJ, et al: Influence of ventricular morphology on outcome after the Fontan procedure. Am J Cardiol, 86: 319-323, 2000.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報