精選版 日本国語大辞典 「卯花」の意味・読み・例文・類語
う‐の‐はな【卯花】
- 〘 名詞 〙
- ① 植物「うつぎ(空木)」の異名。〔日本植物名彙(1884)〕
- ② 空木(うつぎ)の花。古来、ほととぎすなどとともに、初夏の代表的風物の一つとされ、白く咲き乱れるさまは、雪、月、波、雲などにたとえられた。また、「う」は「憂」に掛けても用いられた。水晶花(すいしょうか)、夏雪草(なつゆきぐさ)、垣見草(かきみぐさ)その他、異名が多い。《 季語・夏 》
- ③ 襲(かさね)の色目の名。普通、表は白で裏は青と解されている。陰暦四、五月に用いた。うのはながさね。うのはないろ。
- [初出の実例]「藤侍従、ありつる花につけて、卯の花の薄様に書きたり」(出典:枕草子(10C終)九九)
- 「出だし車に、色々の藤・躑躅・うのはな・なでしこ・かきつばたなど、さまざまの袖口こぼれ出でたる、いと艷になまめかし」(出典:増鏡(1368‐76頃)一六)
- ④ ( 色が白くて②に似ているところから。また、一説に空(から)をきらって得(う)の花としたともいう ) 豆腐のしぼりかす。豆腐のから。雪花菜(きらず)。おから。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
- ⑤ 「うのはなおどし(卯花威)」の略。
- ⑥ 「あゆ(鮎)」の女房詞。〔女中詞(元祿五年)(1692)〕
- ⑦ 植物「たにうつぎ(谷空木)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
卯花の語誌
( 1 )「うつぎ」は古くから地境、垣根に植えられたらしく「うのはな」は垣根に咲く花として歌われることが多い。
( 2 )「見渡せば浪のしがらみかけてけりうの花さける玉川の里」〔後拾遺‐夏〈相模〉〕から、摂津国玉川の里が、卯の花の名所と見なされるようになった。