日本大百科全書(ニッポニカ) 「原価企画」の意味・わかりやすい解説
原価企画
げんかきかく
target costing
原価企画とは、一般的には、製品にかかる特定の原価目標を設定してその達成のために実施される初期段階での総合的管理活動をいうもので、広義の原価管理(コスト・マネジメント)の重要な要素と理解されている。製品が実際に製造される段階での原価管理活動としての原価維持や原価改善と区別される。
企業における製品の生産過程は、当該製品の開発・設計の段階を経て具体的な製品の仕様や製法等が決定される。製品原価の実際の発生は、製品製造の段階において多くを費やすものであるが、それらの原価の事実上の確定は、企画や開発を推進しているいわば上流(川上)の段階における諸活動のいかんに依存している。したがって、原価の削減もしくは縮減の実効性を高めるためには、そのような初期段階において、開発や設計に携わるエンジニアとともに、コストや会計、さらにマーケティングの領域を専門とするスタッフが加わったチームにおいて製品企画等の包括的な活動を推進することが肝要である。このような活動を重視した原価の絞込み活動が原価企画である。
製品企画の段階における見直し活動は、従来からVA(バリュー・アナリシスvalue analysis=価値分析)やVE(バリュー・エンジニアリングvalue engineering=価値工学)として知られていたが、その実用はかならずしもコスト削減の意図とは一体的ではなかったといえよう。原価企画は、従前からの知恵とコスト管理・利益管理の統合化によって果たされる現代的な原価管理手法と評価される。
企業における価格(市場での成果)と原価(企業での投資)の関係は、業態によってさまざまであるが、原価企画の具体的な展開は、価格、原価、利益の三者関係において、工学的な見積原価と想定される生産システムでの許容できる原価の収斂(しゅうれん)によって、目標とすべき原価(目標原価)を早期に確定することである。
実践としては、トヨタ自動車が1960年代にこのような管理活動を開発したといわれている。
[東海幹夫]
『田中雅康著『原価企画の理論と実践』(1995・中央経済社)』▽『吉田栄介著『原価企画能力――持続的競争優位をもたらす』(2003・中央経済社)』