翻訳|nucleonics
原子核に関する現象を、理論と実験の両面からとらえ、原子力の応用に重点を置いた科学の一分野である。基礎となる学問分野は物理学、とくに原子核物理学であり、中性子と原子核の相互作用から出発する。原子核反応、中性子断面積、核分裂、放射能、原子炉など、扱う分野は広範囲にわたっている。
原子力に関する科学が他の学問分野と大きく異なる点は、核現象に起因する諸現象を取り扱うところにある。そのなかでも放射能の管理は重要である。原子核物理学あるいは原子核工学でいちばん基礎となる現象は、放射線と物質の相互作用、および放射線の測定法である。放射線には、中性子線、α(アルファ)線、γ(ガンマ)線、β(ベータ)線、荷電粒子線などがあり、それぞれ物質との相互作用も大きく異なっている。中性子やγ線は厚い金属板でも比較的容易に通過するが、α線、β線、荷電粒子線などは厚さ1センチメートルのアルミニウム板で完全にストップすることができる。放射線のこれらの性質は、原子炉や加速器を使って実験する場合、あるいは原子力施設の遮蔽(しゃへい)設計をする場合には不可欠な知識となる。
原子炉の核現象をすべて考慮した核設計などには、中性子と原子炉構造材核種との相互作用を定量的に取り扱った核データが必要であるが、核データの測定や評価なども原子核工学のなかに含まれ、欧米や日本で評価済み核データが編集され、実用化されている。原子炉の安全性や経済性に直接かかわるデータだけに、信頼度の高いデータが要求されている。要求されている精度は数%、特定の核種については1~2%にも及んでいる。
[桜井 淳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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