原子核工学(読み)ゲンシカクコウガク(その他表記)nucleonics

翻訳|nucleonics

デジタル大辞泉 「原子核工学」の意味・読み・例文・類語

げんしかく‐こうがく【原子核工学】

核物理学基礎として、原子力エネルギー利用重点を置いた工学の一分野。安全性や経済性を踏まえた原子炉設計をはじめ、原子核放射線性質を調べるための加速器による実験などが含まれる。核工学

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子核工学」の意味・わかりやすい解説

原子核工学
げんしかくこうがく
nucleonics

原子核に関する現象を、理論と実験の両面からとらえ、原子力応用に重点を置いた科学の一分野である。基礎となる学問分野は物理学、とくに原子核物理学であり、中性子と原子核の相互作用から出発する。原子核反応、中性子断面積、核分裂放射能、原子炉など、扱う分野は広範囲にわたっている。

 原子力に関する科学が他の学問分野と大きく異なる点は、核現象に起因する諸現象を取り扱うところにある。そのなかでも放射能の管理は重要である。原子核物理学あるいは原子核工学でいちばん基礎となる現象は、放射線と物質の相互作用、および放射線の測定法である。放射線には、中性子線、α(アルファ)線、γ(ガンマ)線、β(ベータ)線、荷電粒子線などがあり、それぞれ物質との相互作用も大きく異なっている。中性子やγ線は厚い金属板でも比較的容易に通過するが、α線、β線、荷電粒子線などは厚さ1センチメートルのアルミニウム板で完全にストップすることができる。放射線のこれらの性質は、原子炉や加速器を使って実験する場合、あるいは原子力施設の遮蔽(しゃへい)設計をする場合には不可欠な知識となる。

 原子炉の核現象をすべて考慮した核設計などには、中性子と原子炉構造材核種との相互作用を定量的に取り扱った核データが必要であるが、核データの測定や評価なども原子核工学のなかに含まれ、欧米や日本で評価済み核データが編集され、実用化されている。原子炉の安全性や経済性に直接かかわるデータだけに、信頼度の高いデータが要求されている。要求されている精度は数%、特定の核種については1~2%にも及んでいる。

[桜井 淳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子核工学」の意味・わかりやすい解説

原子核工学
げんしかくこうがく
nuclear engineering; nucleonics

原子核の構造,原子核反応や放射線と物質の相互作用についての知識を工学,医学,生物学的な目的へ応用するための研究および技術。核工学,原子力工学,あるいはエネルギー量子工学などともいう。原子炉・核融合炉の設計,建設,試験および運転,その周辺装置や放射線検出器,粒子加速器,放射線化学などを中心に始まったが,近年は原子炉運転にかかわるマン・マシン・インターフェース,人工知能,計算工学,安全評価工学などにその領域を広げている。

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