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古山高麗雄 ふるやまこまお

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

古山高麗雄
ふるやまこまお

[生]1920.8.6. 朝鮮新義州
[没]2002.3.11. 神奈川,相模原
作家。裕福な医者の家に生まれ,独特な強い我の持ち主として育つ。第2次世界大戦中の 1942年に召集され,アジア各国を転戦したが虚弱なためしばしば行軍で脱落した。この戦争体験から厭世観にとらわれ,小説を書くことで自己を回復していった。ベトナムのサイゴン戦犯刑務所雑居房での猥雑な生活を淡々と描いた『プレオー 8(ユイット)の夜明け』(1970芥川賞)以後,一種独特の軽みのある文体で,澄んだ清潔な世界を造形した。『小さな市街図』(1972)では故郷を再現し,『点鬼簿』(1979),『身世打鈴(シンセターリョン)』(1980)の私小説では妹の死から始まり南方からの引き揚げで終わる最もつらい時期を描き,『蛍の宿』(1980)から『妻の部屋――遺作十二篇』(2002)まででは壊れかけた家庭が最後まで壊れず,不思議な調和をみせて完結するまでを描いた。『断作戦』(1982),『龍陵会戦』(1985),『フーコン戦記』(1999)は戦争文学三部作で,2000年に菊池寛賞を受賞した。

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百科事典マイペディアの解説

古山高麗雄【ふるやまこまお】

小説家。朝鮮新義州生れ。旧制三高中退。1942年召集を受け,ラオスで終戦を迎える。以後編集者となり,1967年《季刊芸術》編集長。《墓地で》《白い田圃》を経て,サイゴンの戦犯刑務所雑居房の生活を描いた《プレオー8(ユイット)の夜明け》(1970年)で芥川賞,《小さな市街図》(1972年)で芸術選奨新人賞受賞。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

古山高麗雄 ふるやま-こまお

1920-2002 昭和後期-平成時代の小説家。
大正9年8月6日朝鮮新義州生まれ。昭和17年応召,ラオスで終戦をむかえ戦犯容疑にとわれる。22年復員し,編集者となる。45年戦争体験にもとづく「プレオー8(ユイツト)の夜明け」で芥川賞。48年「小さな市街図」で芸術選奨新人賞。平成6年「セミの追憶」で川端康成文学賞。日常にひそむユーモアと虚無をえがく独自の作風で知られた。平成14年3月14日自宅で死去しているのを長女に発見された。11日ごろ死去。81歳。第三高等学校中退。

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大辞林 第三版の解説

ふるやまこまお【古山高麗雄】

1920~2002) 小説家。旧朝鮮新義州生まれ。三高中退。捕虜体験を描いた「プレオー 8 の夜明け」で芥川賞を受賞。日常的な兵士の視点で軍隊を描く。作品「小さな市街図」「断作戦」「竜陵会戦」「フーコン戦記」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

古山高麗雄
ふるやまこまお
(1920―2002)

小説家。朝鮮新義州生まれ。旧制三高中退。第二次世界大戦中は一兵卒として転戦。戦後は編集者となったが、その間、1969年(昭和44)短編『墓地で』でデビューし、翌年には戦争体験を素材にした『プレオー8(ユイット)の夜明け』で芥川(あくたがわ)賞を受賞した。苦いユーモアとさりげない平常心に潜む虚無を、平明な文体でつづる作品が多い。『小さな市街図』(1972。芸術選奨新人賞)、『点鬼簿』(1979)、『蛍の宿』(1980)などに、その面目がうかがえる。その後、『日本好戦詩集』(1979)を発表、そして『断作戦』(1982)、『龍陵(りゅうりょう)会戦』(1985)、『フーコン戦記』(1999)は、著者の過酷な戦争体験をもとにして、戦争に巻き込まれた人々への鎮魂の思いをつづった、渾身(こんしん)の三部作で、2000年(平成12)の菊池寛(かん)賞受賞作となった。ほかに『岸田国士(くにお)と私』(1976)、『セミの追憶』(1994。川端康成文学賞)などがある。[金子昌夫]
『『小さな市街図』(1972・河出書房新社) ▽『断作戦』(1982・文芸春秋) ▽『龍陵会戦』(1985・文芸春秋) ▽『セミの追憶』(1994・新潮社) ▽『フーコン戦記』(1999・文芸春秋) ▽『二十三の戦争短編小説』(2001・文芸春秋) ▽『プレオー8の夜明け 古山高麗雄作品選』(講談社文芸文庫)』

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