日本の植民地金融機関の一つ。1897年公布の台湾銀行法により,99年9月に開業した(本店,台北。資本金500万円)。同行は単なる中央発券銀行にとどまらず,広範な業務を兼営し,台湾金融界で独占的地位を築いた。設立直後に同行がまず手がけたのは紙幣の統一であった。紙幣ははじめは銀兌換(だかん)券であったが,1904年7月には金兌換券に切り換えた。また,台湾の特産物である砂糖や茶に対する為替取組みを積極的に行った。こうした台銀の業務の発展は,日本人商人の台湾における商権確立に多大の寄与をした。さらに同行は台湾の公共事業に対しても融資を行った。第1次大戦以前は業務の主体は台湾にあったが,大戦期には内地の貸出しを増加させ,16年には内地貸出額が台湾島内貸出額を凌駕するに至った。内地での貸出しの中心は大戦期に急成長した鈴木商店およびその傘下事業への融資である。そのため,20年恐慌後に鈴木商店が経営悪化するにともない,台銀の不良貸しも累積した。台銀の鈴木商店系事業に対する貸出しは26年末には全貸出しの7割にものぼっている。27年3月に始まった金融恐慌の中で,台湾銀行の危機が伝えられると,時の若槻礼次郎内閣は台銀救済の緊急勅令案を準備した。しかし,若槻の対中国協調外交に不満を持つ伊東巳代治らにより枢密院で勅令案が否決され,4月18日に台銀の内地および海外支店は休業に追い込まれた。若槻首相辞任後の田中義一内閣の蔵相高橋是清は同年5月に〈台湾ノ金融機関ニ対スル資金融通ニ関スル法律〉を成立させ,台銀の再建を始めた(台湾銀行救済問題)。その後,経営回復は順調に進んだが,準戦時・戦時下の業務の重点はふたたび台湾島内に移され,業務は活発ではなかった。敗戦後の45年9月,同行はGHQの〈外地ならびに外国銀行および戦時特別金融機関の閉鎖に関する覚書〉により,他の植民地金融機関とともに,即日閉鎖を命ぜられた。
執筆者:浅井 良夫
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日清(にっしん)戦争後日本の台湾領有、植民地化に伴い1897年(明治30)公布の台湾銀行法に基づいて99年に設立された特殊銀行。設立時の資本金500万円、うち100万円は政府が出資。銀行券発行、国庫金取扱いなどの特権を付与され、植民地台湾の中央銀行としての役割を果たすとともに、預貸金、外国為替(かわせ)、動産・不動産金融など普通銀行業務もあわせ行った。設立当初は、領有前以来の幣制混乱を整理して金本位の日本通貨体制へと導き、また島内の開発金融にあたっても大いに業績をあげた。第一次世界大戦後より内地および海外での活動を進展させ、なかんずく中国南部、南洋諸島などに支店を設置、日華合弁事業、対華借款など日本の帝国主義政策に対応した。他方、内地での業績も第一次世界大戦時の好況で大いに拡大、普通銀行化の傾向を強めたが、1920年(大正9)戦後恐慌を契機に現れた鈴木商店など大口貸出先の経営悪化と、コール資金取入れによる資金調達の無理が27年(昭和2)の金融恐慌時に暴露され、行き詰まった。1930年代なかばに経営再建がなり、第二次世界大戦中は中国南部、東南アジアなどの日本占領地で活躍したが、戦後1945年にGHQ(連合国最高司令部)の指令によって閉鎖された。
[岡田和喜]
『台湾銀行史編纂室編・刊『台湾銀行史』(1964)』▽『大蔵省編『明治大正財政史 第16巻』(1938・財政経済学会)』
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台湾の産業開発と華南・南洋との貿易金融を目的として,1897年(明治30)の台湾銀行法,99年の台湾銀行補助法にもとづいて設立された紙幣発行権をもつ植民地銀行。当初,台湾の錯綜した通貨の統一,台湾事業公債の引受けなどにあたったが,日露戦争後,島内事業資金の供給,貿易金融などの業務が中心となった。鈴木商店系の不良貸しのため,1927年(昭和2)の金融恐慌で破綻し,3分の1に減資した。日中戦争時は中国国内に,太平洋戦争開戦後は南方各地に多数の店舗を増設して,占領地金融工作に従事。45年の敗戦で閉鎖機関に指定された。
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…また1900年4月北海道拓殖銀行が北海道の開発金融機関として発足し,02年4月には日本興業銀行が長期工業金融を目的として開業した。そのほか植民地銀行として,1899年9月台湾銀行が開業し,09年10月韓国銀行(1911年8月朝鮮銀行に改称)が設立された。 第1次大戦の好況期に普通銀行は資金の充実を図り,大規模となった。…
※「台湾銀行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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