特殊銀行(読み)トクシュギンコウ

デジタル大辞泉 「特殊銀行」の意味・読み・例文・類語

とくしゅ‐ぎんこう〔‐ギンカウ〕【特殊銀行】

第二次大戦前特定政策金融目的として特別法に基づいて設立された銀行戦後廃止され、その一部普通銀行長期信用銀行などに転換した。戦前の横浜正金銀行日本勧業銀行農工銀行北海道拓殖銀行日本興業銀行台湾銀行朝鮮銀行など。

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精選版 日本国語大辞典 「特殊銀行」の意味・読み・例文・類語

とくしゅ‐ぎんこう‥ギンカウ【特殊銀行】

  1. 〘 名詞 〙 銀行法の適用を受ける普通銀行に対し、特別の法令の適用を受ける銀行。第二次世界大戦前の日本銀行、朝鮮銀行、台湾銀行、横浜正金銀行、日本勧業銀行、農工銀行、日本興業銀行、北海道拓殖銀行、朝鮮殖産銀行など。戦後、日本銀行および外国為替専門銀行信託銀行などを特殊銀行と呼ぶ場合があるが、これらは特殊会社ではないため、特別銀行とも呼ぶ。特別銀行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特殊銀行」の意味・わかりやすい解説

特殊銀行
とくしゅぎんこう

殖産興業政策の推進のための長期資金供給の金融機関として特別法によって設立され、特別の権限と政府の手厚い保護を受けていた銀行。特殊銀行設立の構想は、日本の金融制度創設を主導した松方正義(まさよし)が、分業主義に基づき、1881年(明治14)に「財政議」で初めて示した。農工業振興を図る興業銀行設立の構想がこれである。特殊銀行設立の構想はその後若干の曲折はあったが、貿易金融の専門機関としての横浜正金(しょうきん)銀行、不動産金融を主とする日本勧業銀行・農工銀行、北海道開発のための長期貸付を行う北海道拓殖銀行、動産金融・外資導入を主とする日本興業銀行、植民地経営などの分野の台湾銀行・朝鮮銀行などとして1900年(明治33)を前後とする時期に次々に設立された。ここに分業主義に基づく日本の金融制度が整備され、特殊銀行は各分野で長期金融を担うことが期待された。しかし、実際には普通銀行が産業金融に深くかかわっていたため、特殊銀行はしだいに普通銀行と同質化し、債券発行などの資金調達の特権が残されただけで、むしろ戦時下の政治・経済に深く関与することとなり、第二次世界大戦後にGHQ連合国最高司令部)によって解体・再編の強い目標とされるに至ったのである。

[岡田和喜]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特殊銀行」の意味・わかりやすい解説

特殊銀行
とくしゅぎんこう

「銀行法」によって設立される普通銀行に対し,特定の目的のためにそれぞれ単独の特別法に基づいて設立された銀行。第2次世界大戦前の日本における日本銀行,朝鮮銀行,台湾銀行,横浜正金銀行,日本勧業銀行,日本興業銀行,朝鮮殖産銀行,北海道拓殖銀行,各農工銀行 (戦時中日本勧業銀行に吸収) ,各貯蓄銀行がこれに該当した。これらの銀行は政府の保護と監督のもとに,中央銀行業務,貿易金融業務,長期信用業務などそれぞれ特別の機能をもち,国策的金融機関として普通銀行を補完しつつ日本経済に大きな役割を果した。戦後は日本銀行法を除きこれらの銀行の根拠法規は廃止され,朝鮮銀行 (のちに一部残余資産を継承して日本不動産銀行,現日本債券信用銀行設立) ,台湾銀行および朝鮮殖産銀行は閉鎖となり,その他は普通銀行に転換した (横浜正金銀行は東京銀行と改称) 。のちに長期信用銀行法 (昭和 27年法律 187号) の施行に基づいて日本興業銀行は長期信用銀行に,外国為替銀行法 (昭和 29年法律 67号) に基づいて東京銀行が外国為替専門銀行にそれぞれ転換したが,現在ではこれらを特殊銀行とは呼ばない。

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百科事典マイペディア 「特殊銀行」の意味・わかりやすい解説

特殊銀行【とくしゅぎんこう】

特定の目的のために特別の法律によって設立された銀行。多くは長期の産業金融を担当するために明治中期から大正にかけて設立された。特徴は政府から特別の便宜が与えられた反面,その厳重な監督下に置かれたことである。歴史的には,日本銀行,朝鮮銀行,台湾銀行,横浜正金銀行,日本勧業銀行,農工銀行,日本興業銀行,北海道拓殖銀行,朝鮮殖産銀行をさすが,このうち日本銀行のみが特殊銀行として現在残っている。
→関連項目日本興業銀行[株]日本勧業銀行[株]農工銀行

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「特殊銀行」の解説

特殊銀行
とくしゅぎんこう

第2次大戦前の銀行制度で,長期信用業務など政府の特殊な政策目的を担った銀行。松方正義らによって構想され,おもに明治30年代に実現した。貿易金融の横浜正金銀行のほか,農工業金融の日本勧業・府県農工,工業金融の日本興業,植民地金融の台湾・朝鮮などの各銀行である。特殊銀行に対しては債券発行による長期資金の調達が許されたほか,政府資金供給の機関とされるなど厚い保護が加えられたが,営業の過程でその実態が設立目的と乖離(かいり)する場合も多かった。第2次大戦後これらの特殊銀行はGHQによって解体された。

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改訂新版 世界大百科事典 「特殊銀行」の意味・わかりやすい解説

特殊銀行 (とくしゅぎんこう)

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世界大百科事典(旧版)内の特殊銀行の言及

【銀行】より


【普通銀行と銀行法】
 各種の銀行はそれぞれ法律によってその設立,業務分野が規定されている。なかでも中枢を占めるのは普通銀行(普通銀行・特殊銀行)であって,銀行法(1927公布,28施行)がその立法措置である。普通銀行以外の銀行に関する法律は,銀行法に準じて,それぞれ固有の業務分野の性格が加味されて制定されている。…

【普通銀行・特殊銀行】より

…普通銀行とは国立銀行の存在していた時代には私立銀行をいい,国立銀行が普通銀行に転換した後は特殊銀行に対して一般の銀行を普通銀行と称した。〈普通銀行〉は慣用語で,一般的な用語となったのは第1次大戦後で,1916年4月大蔵省の組織が改正され,銀行局が独立し,その際,特別銀行課,貯蓄銀行課とともに普通銀行課が設置されたからである。…

※「特殊銀行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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