日本大百科全書(ニッポニカ) 「合科学習」の意味・わかりやすい解説
合科学習
ごうかがくしゅう
複数の教科を統合し、ひとまとまりのものとして学習させること。教科をばらばらに教授・学習することの弊害を抑え、それらを統合し相互に関連づけることによって、全体としての人間教育を計っていこうとする。一般に、(1)子供の生活の全一性と、対象としての客観的文化の全一性に統合の原理を求め、(2)具体的、直観的な生活上の事実や事柄を教材とし、(3)子供の自発的、作業的な活動を重視する。今日では低学年段階での学習指導法として定着してきている。
20世紀初期、ドイツでは、ヘルバルト派の伝統を背景に合科教授Gesamtunterricht運動が進められた。従来は教科目別に学習していた教材を、子供の生活に身近な統一的事実を中心に統合し授ける低学年の郷土的、直観的な合科教授から、小学校全8学年の全教授を生活によって統合するものまで多様な形態が提案された。同じ時期、アメリカにおいて提唱されたプロジェクト・メソッドは一面では合科学習であったし、1934年のバージニア・プランに始まるコア・カリキュラムも、教科を前提としていないが、もっとも広範囲な合科的学習とみることができる。
わが国においては、大正新教育運動の指導者である木下竹次(たけじ)(1872―1946)のもと、奈良女子高等師範学校附属小学校で開始された「合科学習」、東京女子高等師範学校附属小学校のプロジェクト・メソッドに基づく「全体教育」が有名である。また、一部では、自然的教材と人文的教材を統合して、郷土科、直観科、文化科などの名のもとに合科学習がなされた。第二次世界大戦後まもなくコア・カリキュラムが試みられ、1989年(平成1)には小学校第1・2学年に社会科と理科を統合した生活科が置かれた。98年小・中学校に、99年高等学校に開設された「総合的な学習」の時間は、教科を越えて、教科外活動のみならず学校外の教育的活動をも含めて統合的に組織しようとする、文字通りの総合学習であるが、その中心となるのは合科的な学習であろう。
[森分孝治]
『木下竹次著『学習原論』(1972・明治図書出版)』▽『佐藤学著『米国カリキュラム改造史研究――単元学習の創造』(1990・東京大学出版会)』▽『中野光・川口幸宏・行田稔彦編『生活科教育――生活教育からのアプローチ』(1993・学文社)』▽『田中耕治編著『「総合学習」の可能性を問う――奈良女子大学文学部附属小学校の「しごと」実践に学ぶ』(1999・ミネルヴァ書房)』▽『今谷順重編著『総合的な学習と特色あるカリキュラム経営』(1999・黎明書房)』