和光同塵(読み)ワコウドウジン

デジタル大辞泉 「和光同塵」の意味・読み・例文・類語

わこう‐どうじん〔ワクワウドウヂン〕【和光同×塵】

《「老子」四章「和其光、同其塵」から。光をやわらげてちりに交わるの意》自分学徳才能を包み隠して俗世間に交わること。
仏語。仏・菩薩ぼさつ本来威光をやわらげて、ちりに汚れたこの世に仮の身を現し、衆生を救うこと。

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精選版 日本国語大辞典 「和光同塵」の意味・読み・例文・類語

わこう‐どうじんワクヮウドウヂン【和光同塵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「老子‐四」の「挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵」から ) すぐれた学徳や才能を深く包んで、世俗に交じりあうこと。
    1. [初出の実例]「聖人は和光同塵して、悪人に交ても煩なし」(出典:応永本論語抄(1420)公冶長第五)
  3. 仏語。仏菩薩が、衆生を救うため、本来の威光をやわらげ、仮の姿を俗世に現わすこと。
    1. [初出の実例]「公子曰、和光同塵抑有前聞」(出典秘蔵宝鑰(830頃)中)
    2. [その他の文献]〔摩訶止観‐六・下〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和光同塵」の意味・わかりやすい解説

和光同塵
わこうどうじん

光を和らげ塵に同ずること、すなわち、自らの智徳(ちとく)の光を隠して世俗のなかに立ち交じること。『老子』第4章、第56章に「其(そ)の光を和し、其の塵に同ず」として出る。それがのちに仏教に取り入れられ、『注維摩詰経(ちゅうゆいまきつきょう)』や天台の『摩訶止観(まかしかん)』では、仏・菩薩(ぼさつ)が衆生(しゅじょう)教化のために、その本身を変じて応化(おうけ)の姿をとることをいうようになった。さらに日本では本地垂迹(ほんじすいじゃく)説に関して用いられるようになり、仏・菩薩が日本の神祇(しんぎ)としてかりに姿を現すことをさすようになった。和光垂迹ともいう。

[末木文美士]

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四字熟語を知る辞典 「和光同塵」の解説

和光同塵

自分のすぐれた知能や才能、徳などを隠して、世俗に交じりあうこと。

[使用例] 老子の提唱した和光同塵という境地がある。虚脱に過ぎてかえって技巧のあとを感ずる[石坂洋次郎若い人|1933~37]

[解説] 「その光を和らげ、その塵に同じうする」の意味。

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とっさの日本語便利帳 「和光同塵」の解説

和光同塵

光を和らげ塵に同ず。際立ち目立つところをなくすこと。

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世界大百科事典(旧版)内の和光同塵の言及

【神仏習合】より

…その代表的なものは紀州熊野信仰である。 中世,習合思想のスローガンであった和光同塵(わこうどうじん)の語はその源は中国の道教にあるが,仏菩薩がその慈悲広大の光を隠し人間俗界の塵に交じって神とあらわれる化身的意味に用い,これを各地の神社について民衆にわかりやすく説くため歴史物語化した縁起の類がつくられ,これが絵巻物や本地物とよばれる一群の御伽草子となっていっそう普及した。また密教の曼荼羅(まんだら)をまねて神祇の姿あるいは本地となる仏の像を並べ,これに社頭の風物を配した習合(垂迹)曼荼羅図がつくられたのは,社参の労を省き,日常生活のなかで御利益を祈る礼拝対象とせんがためであった。…

※「和光同塵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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