摩訶止観(読み)まかしかん(英語表記)Mo-he zhi-guan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

摩訶止観
まかしかん
Mo-he zhi-guan

中国,隋の天台大師智 顗が講述したものを,門人灌頂筆録した書。 10巻。法華三大部の一つ。天台宗の教義を創立した智 顗が,晩年の開皇 14 (594) 年荊州 (湖北省江陵) の玉泉寺で独自の論理と実践法を述べたもの。経典や論書に準拠して円頓止観を説き,それは「一念の心に迷から悟にいたるあらゆるものごとが本来そなわっている」という「一念三千の理」を心に観じる禅観的思惟によって体得されるものであるとして,その過程において突当るいろいろな壁を打開していく周到な用意を,綿密な配慮のもとに述べている。

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百科事典マイペディアの解説

摩訶止観【まかしかん】

中国,隋代の仏書。天台三大部とよばれる。20巻。智【ぎ】(ちぎ)が594年に荊(けい)州(湖北省)の玉泉寺で講述。灌頂(かんぢょう)の筆録。天台摩訶止観,止観とも。自己の一心のうちに森羅万象が円満具足するという,天台観心を詳述し,実践上の宝典とされる。中国,日本で重視。
→関連項目止観

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世界大百科事典 第2版の解説

まかしかん【摩訶止観 Mó hē zhǐ guān】

中国,天台宗の祖師智顗(ちぎ)が,南岳恵思より伝えた,止観の思想について講じた著。10巻。弟子灌頂の記録であり,《法華経》の注釈である文句,およびその原理を論じた玄義とあわせて,天台三大部とよばれる。摩訶とは大,止観は座禅のことであるが,同じ座禅の教えとして,低きより高きに至る順序を示す次第禅門や,順序を問わぬ不定止観が,迷いより悟りへの過程を説くのに対し,本書は初めよりただちに円頓としての実相の理を明らかにし,一色一香すべて中道で,修も証もない法界極相を説いて,実相そのものの寂然たるところを止,寂にしてつねに照す実相の智恵を観とするところに特色をもつ。

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大辞林 第三版の解説

まかしかん【摩訶止観】

法華三大部の一。一〇巻。594年、隋の智顗ちぎ述、灌頂かんじよう筆録。天台宗の根本的な修行である止観、すなわち瞑想法を体系的に記述、その究極的世界観を明らかにする。天台摩訶止観。天台止観。止観。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

摩訶止観
まかしかん

中国、隋(ずい)代の天台智(ちぎ)が講述し、門下の章安灌頂(かんじょう)が筆録再治した仏書。10巻(各上下20巻)。『法華玄義(ほっけげんぎ)』『法華文句(もんぐ)』とあわせて法華三大部と称され、ともに天台教学の指南とされ、三大部の注釈は唐代の荊渓湛然(けいけいたんねん)の『玄義釈籤(しゃくせん)』『文句記』『止観輔行伝弘決(ふこうでんぐけつ)』が著名で、末疏(まっしょ)は数多い。本書は智禅師の実修門である止観を、漸次・不定(ふじょう)・円頓(えんどん)の3種でとらえ、円頓止観こそ究極的な真理把握の方法とする。内容は全仏教の禅観を止観で体系化し、その観法の対象を十境(第八境以下未説)に分け、それぞれに10種類の観法を用い、あらゆる修行体系が余すところなく総合的に論述される。しかし単なる実修方法の解説ではなく、『法華玄義』や『法華文句』にも論ぜられる空・仮(け)・中の三観や蔵・通・別・円の四教により、有機的に構成された宗教哲学書ともいえよう。この思想は地獄から仏界までの十界が互いに具している説や、現前の一瞬の心に全宇宙が内在する一念三千説に代表される。[塩入良道]
『関口真大校注『摩訶止観』(岩波文庫)』

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世界大百科事典内の摩訶止観の言及

【呼吸】より

…また道教では,吸気を下丹田に集めて精と結びつける還精という呼吸法が説かれているが,これは仏教の禅定で重視される丹田呼吸とも関連している。このように中国では,呼吸法をめぐってヨーガ,仏教,道教の相互交流の跡がうかがえるが,その一例として天台智顗(ちぎ)の《摩訶止観(まかしかん)》をあげることができる。この著作の〈病患境〉という章には,座禅瞑想中に病気になったときそれを治すための対症療法的な呼吸法が細説されている。…

※「摩訶止観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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