雑念を止め、対象を観察する禅定についての解説書。
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中国、隋(ずい)代の天台智顗(ちぎ)が講述し、門下の章安灌頂(かんじょう)が筆録再治した仏書。10巻(各上下20巻)。『法華玄義(ほっけげんぎ)』『法華文句(もんぐ)』とあわせて法華三大部と称され、ともに天台教学の指南とされ、三大部の注釈は唐代の荊渓湛然(けいけいたんねん)の『玄義釈籤(しゃくせん)』『文句記』『止観輔行伝弘決(ふこうでんぐけつ)』が著名で、末疏(まっしょ)は数多い。本書は智顗禅師の実修門である止観を、漸次・不定(ふじょう)・円頓(えんどん)の3種でとらえ、円頓止観こそ究極的な真理把握の方法とする。内容は全仏教の禅観を止観で体系化し、その観法の対象を十境(第八境以下未説)に分け、それぞれに10種類の観法を用い、あらゆる修行体系が余すところなく総合的に論述される。しかし単なる実修方法の解説ではなく、『法華玄義』や『法華文句』にも論ぜられる空・仮(け)・中の三観や蔵・通・別・円の四教により、有機的に構成された宗教哲学書ともいえよう。この思想は地獄から仏界までの十界が互いに具している説や、現前の一瞬の心に全宇宙が内在する一念三千説に代表される。
[塩入良道]
『関口真大校注『摩訶止観』(岩波文庫)』
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…また道教では,吸気を下丹田に集めて精と結びつける還精という呼吸法が説かれているが,これは仏教の禅定で重視される丹田呼吸とも関連している。このように中国では,呼吸法をめぐってヨーガ,仏教,道教の相互交流の跡がうかがえるが,その一例として天台智顗(ちぎ)の《摩訶止観(まかしかん)》をあげることができる。この著作の〈病患境〉という章には,座禅瞑想中に病気になったときそれを治すための対症療法的な呼吸法が細説されている。…
※「摩訶止観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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