和御魂とも書く。日本の神霊観の一つ。荒魂(あらみたま)に対していう。神霊は異なる霊能をもつ霊魂の複合によってはたらくという信仰のあらわれで,和魂は主として神霊の静的な通常の状態における穏和な作用,徳用をさす。これに対して,荒魂は活動的で勇猛,剛健な作用をさしていう。人の日常の行為にも平静と活動との二面があるが,その作用をおこさせる原動力は個別に存在するものと考えられ,神霊も平常のときには一つの神格に統一され別個のはたらきは見せないが,時と場合に応じて分離し,単独に一個の神格としてはたらくものと信じられたのである。そこで,神をまつるにあたっても,和魂だけをまつる場合も,荒魂だけをまつる場合もある。例えば,神功(じんぐう)皇后の〈三韓征伐〉に際して功績があったとされる住吉(すみのえ)神(底筒男命,中筒男命,表筒男命3神の総称)は,和魂が摂津(大阪府)の住吉大社に,荒魂が長門(山口県)の住吉神社にまつられている。
執筆者:大井 鋼悦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…氏神は,氏族を守護する典型的な守護霊の機能をその基盤にもっているのである。ところでタマの立場から見た場合,古代には和魂(にぎみたま)と荒魂(あらみたま)の対立があった。タマが人知を超えた力を発揮すると,それはモノノケ(物の怪)の出現ととらえられ,別にタタリ(祟り)と表現された。…
※「和魂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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