デジタル大辞泉
「善知鳥安方」の意味・読み・例文・類語
うとう‐やすかた【善=知=鳥安方】
奥州外ヶ浜にいたという海鳥。鴨ほどの大きさで、親鳥が「うとう」と鳴くと子の鳥は「やすかた」と答えたという。
「そもそも―の、とりどりに品変はりたる殺生の中に」〈謡・善知鳥〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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うとう‐やすかた【善知鳥安方】
- 〘 名詞 〙 昔、奥州外ケ浜(青森県)、特に津軽郡安潟浦にいたと伝えられる鳥。母鳥が「うとう」と呼ぶと、子鳥は「やすかた」と答える。猟師が母鳥の声をまねて、子鳥を呼び出し捕らえると母鳥は空にあって血の涙を流すという。一説に允恭天皇の時、罪を得て、奥州卒都が浜(外ケ浜)に下った中納言烏頭安潟と、その子の霊の化した鳥という。うとうどり。うとう。
- [初出の実例]「陸奥(みちのく)の外(そと)の浜なるよぶこ鳥、鳴くなる声は、うとふやすかた」(出典:光悦本謡曲・善知鳥(1465頃))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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善知鳥安方 (うとうやすかた)
善知鳥文治安方は,近松半二ら合作の浄瑠璃《奥州安達原》(1762初演)や山東京伝の読本《善知鳥安方忠義伝》(1806刊)などで,罪ある亡き主人の世に秘すべき遺児をかくまう役所を負って活躍している。命名の由来は,ウミスズメ科の海鳥ウトウの鳴声にまつわる和歌説話にある。母鳥が空中でウトウと鳴くと,地上に隠れている子がヤスカタと答える。その習性を利用して猟師が子鳥を捕らえると,母鳥は血の涙を流して嘆くので,血の涙を避けるため猟師は簑笠をかぶらなければならなかったという。能《善知鳥》で知られているが,《新撰歌枕名寄》(南北朝ころの成立)など中世の歌学書や《鴉鷺(あろ)合戦物語》(1476以前の成立)などの御伽草子に散見する著名な説話であった。烏頭大納言藤原安方が流罪となり,外ヶ浜をさすらい,その亡魂が善知鳥となったという在地の伝説を,菅江真澄は《率土か浜(外が浜)つたひ》に記している。また,《運歩色葉集》(1548成立)に〈虚八姿(ヤスカタ)〉の表記を示し〈昔シ異国ヨリ,虚舟(ウツボブネ)ニ八人蔵シテ流サル,其迷魂化シテ,鳥ト成ルナリ〉と注記している。善知鳥と流刑人のイメージの重なり合いは室町時代までさかのぼり,こうした説話をふまえて,近世の善知鳥安方像が創造されたのであろう。
執筆者:西脇 哲夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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善知鳥安方 うとう-やすかた
浄瑠璃「奥州安達原(あだちがはら)」,読み本「善知鳥安方忠義伝」などの登場人物。
罪をおった亡き主人の遺児をかくまって活躍する。海鳥ウトウの母子が空と地上でウトウ,ヤスカタと鳴きかわすという和歌説話からうまれた謡曲「善知鳥」,流罪となった烏頭(うとう)大納言藤原安方の魂が善知鳥となったという説話などをもとに脚色された。
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
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