喉頭軟化症(読み)こうとうなんかしょう(その他表記)Laryngomalacia

六訂版 家庭医学大全科 「喉頭軟化症」の解説

喉頭軟化症
こうとうなんかしょう
Laryngomalacia
(のどの病気)

どんな病気か

 喉頭は硬い軟骨で構成されますが、この軟骨構造が未成熟で軟らかいために、吸気時にかかる陰圧によって喉頭(がい)をはじめとした喉頭の上部構造が喉頭内腔に引き込まれ、気道を狭めることになります。その結果、呼吸困難や喘鳴(ぜんめい)(ぜーぜーした呼吸音)が起こります。

 乳幼児の呼吸困難、喘鳴の半数以上を占めます。また、成人でも長期の気管内挿管や輪状甲状間隙(かんげき)切開による局所の循環障害や感染により、二次的に喉頭軟化症、とくに喉頭の下方の軟骨の軟化を呈してくることがあります。この傾向は糖尿病を合併していると多くなります。

原因は何か

 喉頭の複数の軟骨のうち、他の多くの軟骨は発生4カ月ぐらいの胎児の時期に軟骨化が完成しますが、喉頭の上方をおおう喉頭蓋軟骨だけは発生5カ月から軟骨化が始まり、8カ月ぐらいでようやく完成します。この喉頭蓋軟骨の軟骨化が通常より遅れたために本症が起こります。

症状の現れ方

 多くは生後2週間から1カ月くらいで体重増加して呼吸量も増え、泣き声も大きくなってきたころに症状が起こります。とくに運動や啼泣(ていきゅう)哺乳などの呼吸量が多い時や仰臥位(ぎょうがい)(あお向け)の時に喘鳴が強まります。生後6カ月ぐらいまでは喘鳴は一時大きくなりますが、その後、喉頭の軟骨化が進み、生後2年以内にはほとんどが完治します。

検査と診断

 ファイバースコープで吸気時に喉頭の上部構造が引き込まれることを確認すれば容易に診断できます。しかし、まれに他の狭窄(きょうさく)性病変を合併していることがあるため、喉頭の上部構造が引き込まれてしまった結果、観察できなくなった喉頭内腔とその下方の状態を、単純X線写真などで確認しておく必要があります。

 鑑別診断としては、喉頭内腔を狭める腫瘤(しゅりゅう)小児の場合、血管腫や乳頭腫、嚢胞(のうほう)など)、先天性喉頭狭窄、喉頭横隔膜(おうかくまく)症などの喉頭の形態異常、両側声帯運動不全(麻痺)、また生後12カ月以上で喘鳴やチアノーゼが現れる場合には、喉頭けいれんなどの重篤な病態も考慮します。

治療の方法

 成長とともに軽快し2年以内に完治することがほとんどで、気管内挿管や気管切開が必要になることはまれです。体重の増加に気をつけ、成長が遅れないように注意します。哺乳の際に悪化する場合は、スプーンで少量ずつ飲ませるなどの工夫をします。また、腹ばいにすると喘鳴は軽減ないし消失します。

 成人の二次性喉頭軟化症では、気管切開などの手術的治療が必須です。

病気に気づいたらどうする

 すみやかに専門医の診察を受けます。呼吸器感染のため喘鳴が悪化したり、呼吸困難、チアノーゼが現れる場合があるので、乳幼児ではとくに早急に診察を受けてください。

三枝 英人

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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