流行性脳炎の一種で、近年は欧米でごくまれに報告されるが、ほとんど姿を消した脳炎である。高熱と複雑な脳神経症状がみられ、回復期には嗜眠状態を呈すること、しばしば後遺症としてパーキンソン症候群を残すこと、冬から初春にかけて流行することなどが特徴である。
第一次世界大戦中の1916~17年にウィーンで流行したとき、オーストリアの神経学者エコノモが命名・報告したので、エコノモ型脳炎ともいわれ、またその後に日本脳炎が明らかにされたため、嗜眠性脳炎をA型脳炎、日本脳炎をB型脳炎とよんで区別した。1925年ごろまで世界各地にかなりみられ、病原体はウイルスと推定されているが、確認はされていない。しかし、現在でもウイルス性疾患と考えられている。
[柳下徳雄]
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…1871年(明治4)の夏から秋にかけて京都で流行した脳炎が今日の〈日本脳炎〉の正式記録の始まりである。日本脳炎は長い間,他の脳炎,とくに嗜眠性脳炎(エコノモ型,A型,冬季脳炎などとも呼ばれる)と混同されて,いろいろな名称で呼ばれてきた。すなわち,1903年の東京で流行した〈吉原風邪〉に始まり,仮性脳脊髄膜炎,夏季脳炎,B型流行性脳炎,日本流行性脳炎などと呼ばれてきたが,その後に日本脳炎に統一され,54年に法定伝染病に加えられた。…
…日本脳炎はカによって伝播されるアルボウイルスによるもので,従来日本で夏季に多発していたが,近年予防接種の普及によりまれなものとなった。エコノモ脳炎は嗜眠性脳炎とも呼ばれるもので,1915‐25年に流行したが,その後ほとんど流行はない。大脳基底核が侵され,後遺症として脳炎後パーキンソニズムがみられる点が特徴的である。…
※「嗜眠性脳炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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