囀り(読み)サエズリ

デジタル大辞泉 「囀り」の意味・読み・例文・類語

さえずり〔さへづり〕【×囀り】

鳥などがしきりに鳴くこと。狭義には、繁殖期の鳥が特別な鳴き方をすること。また、その声。 春》「―をこぼさじと抱く大樹かな/立子」→地鳴き
舞楽で、舞人が舞いつつ漢文の詞章を朗詠すること。また、その詞章。中世以後は絶え、無言で舞われるが、その部分の舞の手。てん。→えい
クジラの舌のこと。刺身や鍋の具などにする。
地方の人や外国人などが、聞き取りにくい言葉でしゃべること。また、その言葉。
鵜飼うかいども召したるに、海人あまの―おぼし出でらる」〈松風
[類語](1鳴き声初音鶏鳴東天紅雁が音・吠え声・遠吠え・嘶き・空音

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「囀り」の意味・わかりやすい解説

囀り (さえずり)
song

鳥が繁殖期に出す特殊な美しい鳴き声。地鳴きに対する語。分類学上のスズメ目の鳥で特によく発達しており,さえずるのは一般に雄である。さえずりには主に二つの重要な機能がある。一つはテリトリーなわばり)の宣言である。テリトリーの境界そのものは攻撃行動によって維持されることが多いが,さえずりはほかの雄を自分のテリトリーに近づけさせない働きをもっている。もう一つの機能は,雌をひきつけてつがいを形成することである。このため,テリトリーをかまえ,つがいを形成してしまった雄は,繁殖期であってもあまりさえずらなくなることが多い。さえずりは,鳥の種ごとに異なっている。特に,外観のよく似ているムシクイ類やホトトギス類では,種によるさえずりの違いが著しい。こうした種間のさえずりの違いは,異種間のつがいが形成される危険を減らすことに役だっているらしい。一部の種では,雌もよくさえずり,雄とデュエットすることがある。日本の鳥の中では,コジュケイアオバズクがその好例である。鳥のさえずりは,人の言葉によって置き換えることができる。例えばウグイスのさえずりは“法法華経”と,ブッポウソウの声は“仏法僧”と聞くことができる。このような人の言葉への置換えを,さえずりの〈ききなし〉という。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の囀りの言及

【歌曲】より

…比較的小規模で,抒情的にまとまった気分をもつ声楽曲の形式。ドイツ語でリートLied,フランス語でメロディmélodie(またはシャンソンchanson),英語でソングsong(またはエアayre∥air)と呼ばれるものが,それに当たる。歌曲は,歌詞のもつ文学的な気分が音楽的表現によって高められて〈うた〉となり,音楽的に完結した独自の小形式が形づくられるところに特色がある。…

【唱歌】より

…近世の浄瑠璃,地歌,箏曲などでは歌の歌詞をさす。 しかし,明治初期にsingingやsongの訳語にあてられ,〈学制〉(1872)では小学教科の一つとして唱歌科が設置され(中学校は奏楽),以後,1941年に小学校が国民学校と改称され教科目名が芸能科音楽に改められるまで,唱歌の語は第1に小学校の教科の名称として,第2には,その教科で用いられる教材としての歌をさすようになった。芸能科音楽以後,第2次大戦後の小・中・高校における音楽科では,歌をうたうことのほか,器楽,鑑賞,創作の指導が行われているが,唱歌科では,もっぱら唱歌をうたうこと(歌唱)の指導に限られていた。…

【地鳴き】より

…鳥が出すさえずり以外の鳴き声。地味で単純な声であることが多い。…

【発音器官】より

… 鳥類の鳴管で発振された音声は気管末端にある鼓室で共鳴する。鳥の鳴声はさえずり地鳴きに大別され,重要な社会的機能を果たしている。 両生類では喉頭の内部にある声帯が空気の流通に際して震動し,音を発生する。…

※「囀り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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