デジタル大辞泉
「詠」の意味・読み・例文・類語
えい【詠/×咏】
1 詩歌を作ること。また、その詩歌。
「一首の御―を遊ばしてくだされけり」〈平家・六〉
2 詩歌を声を長く引いてうたうこと。朗詠。
「いかにも歌は、―の声によるべきもの」〈古来風体抄・上〉
3 舞楽で、舞人が舞いながら詩歌を唱えること。また、その詩歌。中国語の原音で唱える囀に対して、日本語読みのもの。
「―果てて、袖うちなほし給へるに」〈源・紅葉賀〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
えい【詠】
〘名〙
① うたうこと。声を長く引き、調子をつけて詩歌をうたうこと。
※古来風体抄(1197)上「又卅一字の歌は、詠ずるにながく詠ぜらるるなり。よりて詠のこゑにつきて、
短歌といひ、ながうたとも申すなるべし」
② 詩歌をつくること。また、その詩歌。
※菅家文草(900頃)五・雨晴対月「此時天縦金毫詠、何処人遑秉レ燭遊」
※
今昔(1120頃か)三「
前栽の中に花の翫び、或は虫の音を聞て詠を吟じ」
③ 舞楽で舞人が舞いつつ
詩句を
諷詠(ふうえい)すること。また、その詩句。
※
源氏(1001‐14頃)紅葉賀「楽の声まさり、物のおもしろき程に、おなじ舞の、あしぶみ、おももち、世に見えぬさまなり。ゑいなどし給へるは」
えい‐・ずる【詠】
① 詩あるいは歌を声に出して読む。吟ずる。詠む。
※今鏡(1170)二「『
十方仏土の中に』などいふ文
(ふみ)を詠ぜさせ給ひて」
※
方丈記(1212)「ひとり調べ、ひとり詠じて、みづから情
(こころ)をやしなふばかりなり」 〔
書経‐益稷〕
② 詩あるいは歌を作る。詠む。
※平家(13C前)六「をしか鳴く此の
山里と詠じけん、
嵯峨のあたりの秋の比
(ころ)」 〔
南史‐范泰伝等賛〕
なが・む【詠】
〘他マ下二〙 (「長む」とも書く)
① 声を長く引く。特に、声を長くのばして、詩歌などを詠誦する。吟詠する。口ずさむ。
※
蜻蛉(974頃)中「鹿のいふなり。〈略〉いとうらわかき声に、はるかにながめ鳴きたなり」
※
袋草紙(1157‐59頃)四「是は俊綱朝臣伏見に侍りけるに、よるたたずみありきけるに、あやしの宿直童の土にふせりて詠ける歌也」
ながめ【詠】
① 声を長くのばして、詩歌などを詠誦すること。吟詠。口ずさみ。
※
夫木(1310頃)一三「月の
夜声もほそめに窓あけて心をやれるうたながめかな〈
藤原信実〉」
② 詩歌をつくること。詠歌。詠吟。
※謡曲・玉葛(1470頃)「げに海士小舟初瀬とは、古き詠めの言葉なるべし」
えい・じる【詠】
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉六「どすごゑにて、詩をぎんじ、和歌をえいじることあり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報