因陀羅(読み)インダラ

デジタル大辞泉 「因陀羅」の意味・読み・例文・類語

いんだら【因陀羅】

《〈梵〉Indraの音写》「インドラ」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「因陀羅」の意味・読み・例文・類語

いんだら【因陀羅】

  1. ( [梵語] Indra の音訳 ) 仏語。
  2. [ 1 ]
    1. [ 一 ] インドの古聖典「リグ‐ベーダ」以来現われる代表的な神。アーリア人はインド侵入以前から雷神として崇拝していた。インド教(ヒンドゥー教)の成立とともにシバ神やビシュヌ神の信仰が隆盛となり、その信奉は衰えたが、のち、仏教に取り入れられて、守護神となった。いんどら。
    2. [ 二 ] 仏教の守護神の一つ。須彌山(しゅみせん)の頂上にある忉利天(とうりてん)善見大城に住んで、四天王などを配下におく。密教では護世八方天の一として尊ぶ。帝釈。いんどら。
      1. [初出の実例]「因陀羅者梵語也、翻云帝釈、此最勝義、無上義、渉入義」(出典大日経開題(824頃))
    3. [ 三 ] 薬師十二神将の一つ。いんどら。因陀羅大将。〔薬師琉璃光王七仏本願功徳経念誦儀軌供養法〕
      1. 因陀羅<b>[ 一 ]</b><b>[ 三 ]</b>〈奈良県 興福寺〉
        因陀羅[ 一 ][ 三 ]〈奈良県 興福寺〉
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙ほうだんこんごうりん(方壇金剛輪)」の異名。いんどら。
    1. [初出の実例]「最勝阿字句、大因陀羅輪、当知内外等、金剛曼荼羅」(出典:大日経‐三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「因陀羅」の意味・わかりやすい解説

因陀羅
いんだら

中国、元代末期(14世紀)の人物道釈画家生没年および経歴不詳。『寒山拾得(じっとく)図』(東京国立博物館)、『布袋(ほてい)図』(根津美術館)、『智常(ちじょう)禅師図』(静嘉堂(せいかどう))などの国宝禅機図断簡』の画家として知られる。画風は、宋(そう)・元禅僧余技作家の水墨画の流れをくむが、その簡潔な表現は禅会図や祖師図にふさわしく、淡墨を無造作にこすりつけるなどの筆致はきわめて個性的である。中国に遺品がなく、日本に数幅が伝来現存している。また因陀羅の名は中国の画史類にみいだされず、わが国の室町時代の『君台観左右帳記(くんだいかんさうちょうき)』に天竺(てんじく)寺梵僧(ぼんそう)とあるほかは、一遺品に記された二行の款記しかない。元末の大慧(だいえ)派の禅僧楚石梵琦(そせきぼんき)(1296―1370)の著賛がある遺品の存するところから、ほぼ同年代の人と推定される。

[星山晋也]


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改訂新版 世界大百科事典 「因陀羅」の意味・わかりやすい解説

因陀羅 (いんだら)
Yīn tuó luó

中国,元代の画僧。生没年,伝歴は不明だが,現存する作品の款記から,法名壬梵因,開封の大光禅寺に住したことのある高僧とも考えられる。活躍期は元末(14世紀)のころと推定される。禅宗の祖師や散聖などをかいた水墨の禅機図が日本に伝来しており,禿筆(とくひつ)を用い,いっさいの飾り気を捨てた直截な画風が,禅宗絵画の一つの典型とみなされ高い評価を受けてきた。作品の多くに元末の禅僧,楚石梵琦らの賛が加えられている。
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百科事典マイペディア 「因陀羅」の意味・わかりやすい解説

因陀羅【いんだら】

中国,元代末の画家。中国では逸伝の人で,生没年不詳。《君台観左右帳記》や画中の落款の記述によると,開封の天竺寺にいたインドから帰化した禅僧らしい。独特の簡潔な筆墨(減筆)による寒山拾得(じっとく)図,布袋(ほてい)図をはじめ多くの禅機図が日本に伝わっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「因陀羅」の意味・わかりやすい解説

因陀羅
いんだら
Yin-tuo-luo

中国,元末の禅宗画家。遺品の款記から華北開封の大光教禅寺の住持で,大師号を授かった禅僧と考えられ,また画中の題賛から,楚石梵 琦に認められた余技の水墨画家と推測される。作例には祖師図や禅機図などがあり,稚拙ともみられる画技は個性的で画趣に富む。日本へは国宝指定の禅機図断簡5幅が伝わり,『布袋図』 (根津美術館) ,『智常禅師図』 (静嘉堂文庫) ,『寒山拾得図』 (東京国立博物館) などがある。

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