中国、元代末期(14世紀)の人物道釈画家。生没年および経歴不詳。『寒山拾得(じっとく)図』(東京国立博物館)、『布袋(ほてい)図』(根津美術館)、『智常(ちじょう)禅師図』(静嘉堂(せいかどう))などの国宝『禅機図断簡』の画家として知られる。画風は、宋(そう)・元禅僧の余技作家の水墨画の流れをくむが、その簡潔な表現は禅会図や祖師図にふさわしく、淡墨を無造作にこすりつけるなどの筆致はきわめて個性的である。中国に遺品がなく、日本に数幅が伝来現存している。また因陀羅の名は中国の画史類にみいだされず、わが国の室町時代の『君台観左右帳記(くんだいかんさうちょうき)』に天竺(てんじく)寺梵僧(ぼんそう)とあるほかは、一遺品に記された二行の款記しかない。元末の大慧(だいえ)派の禅僧楚石梵琦(そせきぼんき)(1296―1370)の著賛がある遺品の存するところから、ほぼ同年代の人と推定される。
[星山晋也]
中国,元代の画僧。生没年,伝歴は不明だが,現存する作品の款記から,法名壬梵因,開封の大光禅寺に住したことのある高僧とも考えられる。活躍期は元末(14世紀)のころと推定される。禅宗の祖師や散聖などをかいた水墨の禅機図が日本に伝来しており,禿筆(とくひつ)を用い,いっさいの飾り気を捨てた直截な画風が,禅宗絵画の一つの典型とみなされ高い評価を受けてきた。作品の多くに元末の禅僧,楚石梵琦らの賛が加えられている。
執筆者:戸田 禎佑
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