減筆(読み)ゲンピツ

百科事典マイペディアの解説

減筆【げんぴつ】

本来は文字の字画を省いて書くこと,略字の意だが,これを絵画に応用し主観的・象徴的表現を試みたもの。〈写意〉を目標とした唐末五代の水墨画家の間に始まり,宋代で確立した。水墨画を白描化した梁楷(りょうかい)のものがその典型。
→関連項目因陀羅

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世界大百科事典 第2版の解説

げんぴつ【減筆 jiǎn bǐ】

水墨画の様式用語の一つ。おもに禅宗的主題の人物画に用いられる。南宋後半の画院画家,梁楷が〈減筆体〉をはじめたとされ,草々たる略筆による水墨道釈画を残しているが,その起源は唐末・五代にさかのぼる。いわゆる逸格の画家たちの人物画は衣紋を粗筆,面貌を細筆でえがかれているが,この画風が,梁楷まで伝えられ,洗練度を加えたと考えられる。日本の海北友松のいわゆる袋人物(ふくろじんぶつ)なども減筆体の一バリエーションである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

減筆
げんぴつ

本来は字画を省いて文字を書くことで、省筆、略字と同じ意味であるが、書の楷・行・草の三体のなかの草体のように、筆数を極度に省略した絵画の技法をいう。中国では書と画とを芸術として同列にみなす伝統があり、とくに六朝(りくちょう)以来、書画一致の思想が書画界で主流を占めていた。しかし、唐代になって絵画の風潮が写実主義、自然主義に大きく傾き、形似を尊重するようになると、その反動として減筆の画法がおこり、唐末五代の水墨画家の間から実際にこの技法を用いた作品が現れた。五代の画家石恪(せきかく)の水墨画などはその具体例であるが、南宋(なんそう)の梁楷(りょうかい)はこの技法をさらに推し進め、水墨画を白描化した本格的な減筆体の独特な画風を打ち立てた。彼の『李白(りはく)吟行図』はその代表的遺品。[永井信一]

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