減筆(読み)ゲンピツ(その他表記)jiǎn bǐ

デジタル大辞泉 「減筆」の意味・読み・例文・類語

げん‐ぴつ【減筆】

絵画、特に水墨画の描法の一。筆数を極度に省略し、そのものの本質表現しようとするもの。南宋梁楷りょうかいの作などが有名。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「減筆」の意味・読み・例文・類語

げん‐ぴつ【減筆】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 単語のつづりを省略すること。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
  3. 絵画で、文字書体でいえば真・行・草の三体うち草体に当たり、筆数の少ない象徴的な技法をいう。水墨画などに見られる。減筆体略筆。→梁楷(りょうかい)
    1. [初出の実例]「狩野氏は、周文雪舟に出て、宋朝の画法を学び、馬遠夏圭牧渓梁楷の減筆をとりて、一家の画法をなし」(出典:文晁画談(1811)唐画和画(古事類苑・文学四三))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「減筆」の意味・わかりやすい解説

減筆 (げんぴつ)
jiǎn bǐ

水墨画の様式用語の一つ。おもに禅宗的主題の人物画に用いられる。南宋後半の画院画家,梁楷が〈減筆体〉をはじめたとされ,草々たる略筆による水墨道釈画を残しているが,その起源は唐末・五代にさかのぼる。いわゆる逸格の画家たちの人物画は衣紋粗筆面貌細筆でえがかれているが,この画風が,梁楷まで伝えられ,洗練度を加えたと考えられる。日本の海北友松のいわゆる袋人物(ふくろじんぶつ)なども減筆体の一バリエーションである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「減筆」の意味・わかりやすい解説

減筆
げんぴつ

本来字画を省いて文字を書くことで、省筆、略字と同じ意味であるが、書の楷・行・草の三体のなかの草体のように、筆数を極度に省略した絵画の技法をいう。中国では書と画とを芸術として同列にみなす伝統があり、とくに六朝(りくちょう)以来、書画一致の思想が書画界で主流を占めていた。しかし、唐代になって絵画の風潮が写実主義、自然主義に大きく傾き、形似を尊重するようになると、その反動として減筆の画法がおこり、唐末五代の水墨画家の間から実際にこの技法を用いた作品が現れた。五代の画家石恪(せきかく)の水墨画などはその具体例であるが、南宋(なんそう)の梁楷(りょうかい)はこの技法をさらに推し進め、水墨画を白描化した本格的な減筆体の独特な画風を打ち立てた。彼の『李白(りはく)吟行図』はその代表的遺品。

[永井信一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「減筆」の意味・わかりやすい解説

減筆【げんぴつ】

本来は文字の字画を省いて書くこと,略字の意だが,これを絵画に応用し主観的・象徴的表現を試みたもの。〈写意〉を目標とした唐末五代の水墨画家の間に始まり,宋代で確立した。水墨画を白描化した梁楷(りょうかい)のものがその典型。
→関連項目因陀羅

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「減筆」の読み・字形・画数・意味

【減筆】げんぴつ

字の筆画を省略する。

字通「減」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android