三菱の岩崎小弥太が設立し,現在は東京都世田谷区に所在する文庫で,和漢の貴重な典籍,絵画,彫刻,工芸品など多数収蔵する。父の弥之助の蔵書をもとに,初めは神田駿河台の岩崎邸の一角に開館し,重野安繹(しげのやすつぐ)に収集・管理を任せて和漢の書を集め,また1894年青木信寅の古写本を中心とする和書蔵書240部1033冊をはじめとして,一括購入も併せ行った。中村正直(敬宇)の漢籍など1562部1万3181冊,色川三中(みなか)(1802-55)の国文学関係の和書1374部4939冊,竹添進一郎(光鴻)の漢籍515部7204冊,松井簡治の〈松井文庫〉(国語国文学関係の和書5902部1万7016冊),諸橋轍次の〈百国春秋楼書(ろうしよ)〉(春秋学関係書に特色のある漢籍174部1200冊)などがある。特筆すべきは1907年に巨費を投じて購入した,清末の四大蔵書家の一人陸心源(りくしんげん)の収蔵書である。すなわち宋元版を収めた〈皕宋楼(ひよくそうろう)〉,明・清の珍本を収めた〈十万巻楼(じゆうまんがんろう)〉などの漢籍4146部4万3893冊であり,世界的に著名である。美術品には十二神将像,広目天眷属像,宗達筆《源氏物語屛風》,燿変天目茶碗など,国宝5件,重要文化財46件の指定品がある。21年に図書館組織に改組,25年に現在地に移転。閲覧には紹介が必要である。
執筆者:竹上 深
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岩崎弥之助(やのすけ)(弥太郎(やたろう)の弟)、および嗣子(しし)小弥太(こやた)によって集められた和漢書約20万冊よりなる文庫。重野安繹(しげのやすつぐ)に集書と管理を委嘱し、1894年(明治27)ころより集書を開始、1940年(昭和15)財団法人静嘉堂に寄付、48年(昭和23)国立国会図書館の支部図書館となり、70年法人に戻る。国学者や漢学者などの旧蔵書が一括架蔵されており、国文方面では田中頼庸(よりつね)旧蔵書約4000冊、色川三中(いろかわみなか)旧蔵書約5000冊、松井簡治(かんじ)旧蔵書約1万7000冊、漢籍では中村敬宇(けいう)(正直(まさなお))旧蔵書約1万3000冊、竹添井井(たけぞえせいせい)(進一郎)旧蔵書約7000冊、清(しん)末の蔵書家陸心源(りくしんげん)旧蔵書約4万冊などを含む。なお、日本・中国の古美術品多数を所蔵展示。東京都世田谷(せたがや)区岡本に所在する。
[橋本政宣]
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…尾形光琳《燕子花図(かきつばたず)屛風》,名物茶入〈松屋肩衝〉はじめ4000点に及ぶコレクションは,没後東京青山に設立された根津美術館に収蔵された。岩崎弥之助(1851‐1909),小弥太(1879‐1945)は三菱の2代,3代総帥であったが,東洋古陶磁,古画を中心に集め,国宝〈曜変天目茶碗〉や《源氏物語図屛風》(宗達筆)に代表される質の高いコレクションを築き,今日では東京世田谷の静嘉堂文庫に所蔵されている。このほか関西の実業家でも,大阪の藤田伝三郎(1841‐1912),平太郎による《紫式部日記絵巻》や〈曜変天目茶碗〉など古書画,茶道具を中心とする収集(現,藤田美術館),兵庫の酒造家,嘉納治兵衛(1862‐1951)による中国古銅器,古陶磁を主体とする収集(現,白鶴美術館)などが知られる。…
※「静嘉堂文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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