日本大百科全書(ニッポニカ) 「国連世界食糧計画」の意味・わかりやすい解説
国連世界食糧計画
こくれんせかいしょくりょうけいかく
United Nations World Food Programme
食糧欠乏国や天災などの被災国に食糧援助を行う国際連合の機関。英語名の頭文字をとってWFPと略称する。世界最大の人道支援機関であり、2020年にノーベル平和賞を受賞した。飢餓と貧困の撲滅を目ざし、1961年、国連総会と国連食糧農業機関(FAO)による並行決議で発足し、1963年から活動を開始した。本部をローマに置き、2017年時点で世界99か国に432の事務所をもつ。職員数は約1万7000人。2017年、第13代事務局長にアメリカのサウス・カロライナ州知事を務めたデイビッド・ビーズリーDavid Beasley(1957― )が就いた。世界では9人に1人が飢餓状態にあり、2019年に世界食糧計画は1000以上のNGO(非政府組織)と連携し、88か国の約9700万人に約420万トンの食糧を援助した。世界食糧計画の運営は、主要36か国で構成する執行理事会が務め、財源は国連加盟国の自発的拠出金・拠出物資・提供役務のほか、個人や団体からの寄付によってまかなわれている。2019年の活動資金は約80億ドルで、日本政府は約1億5700万ドル(世界第10位)を拠出した。
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に盛り込まれた2030年までの飢餓撲滅を目標に掲げ、深刻な食糧・栄養不足地域への食糧支援のほか、紛争や災害にみまわれた国々へ緊急援助を実施。2011年(平成23)には東日本大震災の救援のため日本へ職員と救援物資を送り、50年あまりの世界食糧計画の歴史上初めて先進国を支援した。妊婦や生後2歳までの栄養補助、就学率・学力向上のための学校給食支援、インフラ整備や職業訓練参加を条件とする食糧配布、開発途上国からの食糧購入、物流を担う国連人道支援航空サービスの運営、飢餓・栄養不足の調査、農林業地の開拓・道路建設などにも取り組んでいる。
新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行時に「ワクチンができる日まで、食料こそが最良のワクチンだ」として、世界各地の移動制限を乗り越え、食糧、医療機器、マスク、石鹸(せっけん)などを供給したことが2020年のノーベル平和賞受賞につながった。なお国連機関では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR、1954年と1981年)、国連児童基金(UNICEF(ユニセフ)、1965年)、国際労働機関(ILO、1969年)、国連平和維持活動(PKO、1988年)、国際連合(2001年)がノーベル平和賞をうけている。日本には関連団体として、認定NPO団体「国連WFP協会」がある。
[矢野 武 2021年2月17日]