改訂新版 世界大百科事典 「一次産品問題」の意味・わかりやすい解説
一次産品問題 (いちじさんぴんもんだい)
一般に一次産品primary commoditiesとは,農林水産物,鉱産物の加工される以前のものをさす。一次産品問題と呼ばれるものには,国際価格の短期的な大幅変動と世界需要の停滞による対工業品交易条件の長期的悪化傾向がある。一次産品の価格は,自然的条件により生産量が大きく変動し,その供給が不安定であるという事情と,これに対し需要が一般に硬直的であるという事情によって,短期的に激動しがちである。一方,長期的には,先進国の国内農業保護政策や先進国での原料節約的技術進歩等の要因により,その需要が伸び悩み,価格が低下傾向を示すといわれている。この結果,一次産品の輸出に依存する開発途上国の交易条件は,それらの国が輸入する工業製品価格の上昇傾向とあいまって,長期的に不利化してきたといわれている。価格の短期的激変は輸出国・輸入国双方に不利益をもたらすし,交易条件の長期的悪化は,一次産品輸出をおもな外貨獲得手段としている開発途上国に対し,輸出稼得の減少をひきおこし開発計画への不安定要因を生む。このため価格安定を目的として,現在,小麦,砂糖,コーヒー,ココア,オリーブ油,天然ゴム,ジュート,熱帯木材に関しての国際商品協定が設けられている。スズについては協定があったが,90年に解散した。新国際経済秩序(NIEO)による一次産品総合プログラムは,世界的規模での統一的国際商品協定創設の要求といってよい。1989年にはUNCTADの主導により,一次産品の価格安定をめざす一次産品共通基金が発足した。このほかに開発途上国の輸出収入の不安定性を緩和する手段としてIMF(国際通貨基金)等の補償融資制度がある。
執筆者:村上 敦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報