土免(読み)どめん

精選版 日本国語大辞典 「土免」の意味・読み・例文・類語

ど‐めん【土免】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 江戸時代田畑各級の本高(分米・村高)。斗代(とだい)石盛(こくもり)。転じて、村高に賦課される年貢、また、その年貢割付状免状)をもいう。
    1. [初出の実例]「村々土免其外之儀」(出典:慶長八年諏訪頼水村々土免定書(1603))
  3. 江戸時代、年貢高を決定する際の方法の一つ。土壌善し悪しを基準とした。つちめんとも。
    1. [初出の実例]「御土免は田畑共に地吟味之位を能見合」(出典:井田衍義‐延宝八年(1680))

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改訂新版 世界大百科事典 「土免」の意味・わかりやすい解説

土免 (つちめん)

江戸時代の徴租法の一つ。〈つちめん〉と読むことについては,1620年(元和6)広島藩浅野長晟(ながあきら)書状に〈つちめん〉と見えることによる。検見取(けみどり)が当該年の作柄調査を前提とした徴租法であったのに対し,土壌の善悪を基準に年貢を定める方式。熊本藩ではこの土免について〈御土免は田畑共に地味之位をよく見届け,反別相応に相極め申したく候〉としており,また土佐藩でも〈土地の厚薄にしたがい,何村の免は何ッ成と大抵は定め置き,なおまた,五年三年を限り,その村の豊凶を見合せて春のうち免究め仕り候,これを土免と唱え申し候〉としている。土地生産性の向上によって増収を図る小農民経営の展開に対応して,作柄に基づいた年貢徴収を方針とした豊臣秀吉は,1586年(天正14)土地善悪による土免を禁じた。しかし作柄に基づく徴収は,検見役人の派遣,徴収額の不定性などの難点をもっていたため,近世前期から,この土免を基本にその他の要素を盛り込んだ土免制が,畿内に比べ土壌善悪と作柄とが相対的に対応していたと思われる西国を中心に実施された(熊本藩,土佐藩のほか小浜,岡山,広島,鳥取,大洲,久留米,臼杵などの諸藩)。過去の実績に基づき土免決定,これを春に提示,農民が請け負った場合は土免で徴収,請け負わないときは秋に検見実施,なお凶作時の検見も許容,というのが各藩採用の土免制にほぼ共通する内容である。基本が土壌の善悪であるところから,この方式はおおむね年貢率・額の固定に向かい,場合によっては十数年以上固定されることもあった。呼称は異なるものの,長州藩,松山藩西条藩,福岡藩などで採用された春免(はるめん)制,春定制も同種の徴租法である。なお,従来近世の徴租法については,検見取とともに定免(じようめん)制が挙げられていたが,これは,土免制の一形態として,すなわち年貢率固定の側面重点を置いた土免制としてとらえ直すことができる。
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世界大百科事典(旧版)内の土免の言及

【土免】より

…検見取(けみどり)が当該年の作柄調査を前提とした徴租法であったのに対し,土壌の善悪を基準に年貢を定める方式。熊本藩ではこの土免について〈御土免は田畑共に地味之位をよく見届け,反別相応に相極め申したく候〉としており,また土佐藩でも〈土地の厚薄にしたがい,何村の免は何ッ成と大抵は定め置き,なおまた,五年三年を限り,その村の豊凶を見合せて春のうち免究め仕り候,これを土免と唱え申し候〉としている。土地生産性の向上によって増収を図る小農民経営の展開に対応して,作柄に基づいた年貢徴収を方針とした豊臣秀吉は,1586年(天正14)土地善悪による土免を禁じた。…

【太閤検地】より

… 百姓に対して課せられる年貢は,検地によって確定された自己の保有地の石高(持高(もちだか)=所持石高)に,領主側が定める年貢率=(めん)率を乗じた値として算出される。免率は毎年初秋ごろ,稲の生育状況を見分して決めることが原則であったが,春先にすでに決めておく土免(つちめん)法もまれにみられた。土免は百姓側の希望で採用されることが多く,免率をあらかじめ決めておけば年貢量は自動的に決まるから,百姓が努力して生産量を高めれば,それだけ自分の手元に残す量が多くなる。…

※「土免」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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