検地に際して田畑・屋敷地の公定収穫量(石高)を算出することをいうが,その反当り換算率すなわち斗代のことをもさす。石盛によって算定された石高に一定の率をかけて年貢・諸役が賦課されたので,石盛の高低は貢租量の多少に関係した。斗代の決定は,田畑の優劣によって上,中,下,下々などに位付けし,上田と見立てた場所2~3ヵ所で1坪(約3.3m2)ごとの坪刈りをし,もし坪当り平均籾1升(約1.8l)があれば1反(約991.7m2)で3石(約541.2l)あり,それを五分摺りすれば玄米1石5斗を得るから,1斗(約18l)の15倍ということで〈15の盛〉または〈1石5斗代〉といった。中田以下は二つ下りで中田は13,下田は11,下々田は9,畑は上畑が12,以下二つ下り,屋敷地は12の盛とするのが普通であった。太閤検地段階ではまだ斗代はかなり多様で,1594年(文禄3)の島津分国検地では,同じ上田でも1石6斗代から1石代まで村によって4段階の差があり,屋敷地も1石3斗代と1石代との2種があった。同年の摂津国の検地でも,上田の斗代は村によって1石5斗から1石2斗まで幅があり,さらに上々田の位付けがあって最高1石8斗の石盛があった。おおむね街道筋とか商工業・サービス業などのかなり展開している町場的な村は斗代が高く,生産条件の悪い村の斗代が低い。これは斗代が米穀収穫量を基本に見積りつつも農業外の収益をも含む社会的総生産力を加味し,検地奉行の裁量によって決定されたことを示している。また,政治的・軍事的重要地の斗代を低くした事例もある。江戸時代に入ってからの諸検地では,生産条件の改善や百姓発言権の増大などにより村落間の斗代差はしだいに解消され,寛文・延宝期(1661-81)にはほぼ上田1石5斗,以下2斗下りに定着した。その後,生産力の上昇にともなって実際収穫量と斗代の間に乖離が生じたが,田畑の面積・位付けの変更や租率の上昇はあっても斗代はほとんど改変されなかった。
執筆者:松尾 寿
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検地によって公定された田畑屋敷の反(たん)当りの標準収穫率。斗代(とだい)ともいう。検地の際、田畑の良否により上・中・下・下々(げげ)に分け、上田を坪刈(つぼがり)して平均反当り収量を求め、それがかりに籾(もみ)3石なら五合摺(ずり)にして米1石5斗となり、それを1斗で除した商15が上田の石盛である。中田以下は1級ごとに上田より二つ下がり、上畑は下田と同じ、中畑以下も二つ下がりに石盛する。これが原則であるが、実際には若干変えられることもあった。石盛は1斗を1、1石を10とするもので、これを基準にして石高(こくだか)、年貢高が決められた。石盛の決定には、前述の坪刈のほかに、その地域の社会的富の大小や、政治的判断が加えられることも多かった。
[宮川 満]
斗代(とだい)とも。江戸時代に使われた耕地の段当り基準生産高。検地の際,田畑や屋敷地などの等級を査定するとともに,これに対応する石盛を確定し,石高の算定基準とした。石盛の査定は土地の生産力を基準としていたが,生産力そのものを直接表すわけではなく,地域の経済的・政治的条件なども勘案した。石盛の盛は段別に石高を盛りつけるときの指数で,ふつう1斗で除した数で示された。上田(じょうでん)1段に籾3石,米にして1石5斗収穫できる土地を石盛15,以下二つ下がりに石盛を設定し,上畑・屋敷地は下田並みに扱うのが一応の基準となった。江戸時代を通じて,石盛と現実の生産力とはしだいに乖離(かいり)する傾向にあったが,石盛の改訂はほとんどなされなかった。
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…逆に,畑地を田地に変えることを畑田成という。田畑成の場合,通常,上田は上畑の石盛(こくもり)に,中田,下田はそれぞれ中畑・下畑の石盛に直して石高を算定する。畑は田よりも石盛が低いから,当然もとの石高よりも減高になるが,この分は田畑成石盛違引として高内引(たかうちびき)に加えられ,年貢を免除された。…
…〈みつけものの土地〉の意といわれる。通常の耕地は検地により等級と石盛(こくもり)が決定するが,石盛もつけられない劣悪な土地より少しは良い耕地のこと。等級の最低である下々より以下の石盛1斗,2斗と生産性の低い耕地で,水田を見付田,畑を見付畑という。…
※「石盛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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