江戸時代の徴租法で検見法に対するもの。過去数ヵ年の収穫量の平均を基礎として向こう3,5,10ヵ年あるいはそれ以上,年の豊凶にかかわらず一定の年貢額を請け負わす方法。幕領では近世前半期にはおもに畝引検見(せびきけみ)取法を実施していたが,毎年行う検見法は莫大な出費・日数・労力を要した。また検見完了まで収穫を許さないので,収穫期を失して損失が多く,裏作の仕付けも遅れ,その間農作業も中止せねばならなかった。さらに収税額が年々不同で安定せず歳出予算が立て難いという問題もあり,幕府は農民の欺瞞,官吏の収賄など不正を誘発する理由をもって,1718年(享保3)定免制施行の準備を命じた。これは調査が目的で,たとえ実施しても生産力の安定した限られた村だけで,3ヵ年,5ヵ年の定免年季中損毛があっても引方願いをしない条件であったから,広く施行されることはなく,22年ごろから実際に行われた。
幕府は定免制の実施に当たって破免条項を設けざるをえず,22年定免年季中でも風水旱損・虫付などで一国一郡に及ぶほどの損毛で,一村の百姓残らず検見を願い出た場合は,破免し検見を行うと触れたが,農民の抵抗は強かった。そこで27年破免率を定め,一村限りでも5分(5割)以上損毛の場合は破免すると規定した。さらに翌28年定免年季を5または10年,15年と長くし,村柄相応に年貢率を引き上げた村に限り破免率を4分以上損毛に引き下げた。ついで29-30年田畑分離破免,畑方の麦作・夏秋作2分破免を定めた。29年奥州伊達・信夫両郡農民が夫食貸(ぶじきがし)(夫食種貸)を要求し強訴したが,このころから夫食貸付が増加したのは農民の困窮によるので,幕府は34年破免率を3分以上に改め,夫食貸を行わないこととした。38年(元文3)これまで破免・検見引していた畑作は,畿内・中国筋の畑方綿作以外定免とされた。
諸藩では津藩が1653年(承応2)定免制を実施し,伊予松山藩では67年(寛文7)施行,一時中絶したが79年(延宝7)再び採用するなど,幕領に先行したところもある。定免制は生産力発展の著しい地域では上層農民の手元に剰余を蓄積させ,下層農民には不利となって,農民層分解の一因となった。
執筆者:大野 瑞男
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…このような初期の浮免の例としては,東大寺領の大仏供白米免田・御油免田・香菜免田,興福寺領の進官免田などが著名であるが,これらの大和国内の諸免田では11世紀前半以降しだいに田地の固定化が進行する。この固定化した形態を浮免に対し定免(じようめん)という。鎌倉期以降でも地頭・下司などの荘官に給分として与えられる雑役免田が浮免の形をとることがあり,〈雑免者浮免也,下地不定之間〉と見える高野山領備後国大田荘の例がよく知られている。…
…幕府財政は支出増により悪化し,22年財政が窮迫し旗本・御家人の整理が必要となるほど切米支給や商人への支払が停滞したため,諸大名に対し参勤交代在府期間の半減を代償に高1万石につき100石の上米(あげまい)令を発し急場をしのぎ(1731廃止),根本的解決のため年貢増徴と新田開発に努めた。22年幕領に年貢定免(じようめん)制を施行,石代納に際し三分の一銀納制をとっていた上方諸国にこれをやめて米納を達し,米納困難で金銀納を願った場合は代官が石代値段をせり上げ勘定所にうかがうこととしたので年貢増徴の成果も上がったが,弊害が多く24年廃止した。同時に有毛検見取法(ありげけみどりほう)(有毛検見)を採用,米や商品作物栽培など生産力上昇の成果を収奪し,49年(寛延2)には上方を中心に全国に拡大した。…
…守参は1699年(元禄12)美濃郡代,1718年(享保3)勘定吟味役に抜擢(ばつてき)され14年間在職した農政の熟練者で,〈地方(じかた)の聖〉と称された。内容は検地,年貢,開発,治水,出入作,質地等多方面にわたる簡単な説明であるが,やや詳しく年貢の検見取(けみどり)制と定免(じようめん)制について論じ,定免制は小百姓にとって不利との見解をとっている。《日本経済大典》所収。…
…呼称は異なるものの,長州藩,松山藩,西条藩,福岡藩などで採用された春免(はるめん)制,春定制も同種の徴租法である。なお,従来近世の徴租法については,検見取とともに定免(じようめん)制が挙げられていたが,これは,土免制の一形態として,すなわち年貢率固定の側面に重点を置いた土免制としてとらえ直すことができる。【水本 邦彦】。…
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