地域史(読み)ちいきし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地域史」の意味・わかりやすい解説

地域史
ちいきし

地方史とほぼ同義語であるが,1960年代以降に盛んに使われる用語。中央集中型の高度成長が進むと,経済的な豊かさの反面で自然環境と文化遺産の破壊,公害問題の深刻化,地域住民の間に連帯感希薄化,などの事態が顕在化した。これに対して地域主義的な解決が提唱され,地域として独自的な行動を模索する中で,身近な生活に密着した歴史解明と地域史の必要性が強調されてきた。地域とは,村とか県とかという特定の地理的空間を固定的に示すものではなく,風俗・習慣,言語,経済活動などによって変化するものであるが,地域史は地域社会の生活史という意味合いを強めている。日本史を一般史・中央史とすれば,両者は対立する側面を持ちながら,地域は他の地域や中央とかかわりながら存在するという性格から,両者の関係の解明が重要な課題となっている。また,文献がないか少ない地域の歴史についても,考古学・民俗学・人類学・地理学などの手法を活用した考察が必要である。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「地域史」の解説

地域史(ちいきし)

文字どおり地域の歴史ではあるが,たんなる好事的な郷土史研究や,偏狭な部分的個別研究ではない。19世紀以来の合理主義的歴史像ないし歴史概念を,事実関係の総合的再認識を積み重ねることによって再吟味する志向を持つものであり,史料にもとづく歴史学中心に歴史補助学と呼ばれる諸科学の個別的成果を総合し,もって「個別を通じて全体へ」を目標とするものである。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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