地方財政運営の基本原則について定めた法律(昭和23年法律第109号)。第二次世界大戦後の地方自治の強化に伴って、1948年(昭和23)に制定され、その後、たびたびの改正がなされている。地方公共団体の財政の運営、国の財政と地方財政との関係などに関する基本原則を定め、もって、地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的とする(1条)。
一般には、地方財政法は地方財政に関する基本法といってよいが、その規定は、地方財政のすべての活動内容に及ぶものではない。たとえば、地方公共団体の収入のうち、地方税および地方交付税については、別の法律(地方税法、地方交付税法)の定めるところであり、また財務については、地方自治法が詳細な定めを置いている。
地方財政法は、大別して、次の二つの理念からなっている。
第一は、地方財政の自主性と健全性の確保である。地方自治の発展のためには、地方公共団体の財政的自立が不可欠である。地方財政法は、国は、地方財政の自主的かつ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性を損なってはならない(2条2項)と定める。国と地方との経費負担の原則についても、地方公共団体の事務に要する経費は、当該地方公共団体が全額これを負担することを原則とする(9条)とともに、国庫負担金については制限列挙する(10条~10条の3)などして、国庫負担金による国の財政的関与を極力排除しようとしている。また、財政の健全性を確保するために、地方財政法は、原則として地方債以外の収入をもって歳出にあてるべきこと(5条)、予算の編成執行などを行う場合には、当該年度のみならず、翌年度以降の財政をも考慮して行うべきこと(4条の2)などを定める。
第二は、国と地方公共団体の財政責任の明確化と財政秩序の確立である。この観点から、地方財政法は、上記のような国と地方公共団体との経費の負担区分を明定している。さらに、財源保障として、地方公共団体の負担すべき経費は、これを地方交付税の算定に用いる財政需要額に算入すべきこと(11条の2)などを定めている。また、国と地方公共団体との間において、あるいは地方公共団体相互間において、その負担区分を侵すことのないように、それぞれが負担を転嫁したり、割当的寄付金を徴収したりしてはならない、と定められている(2条2項、4条の5)。なお、市町村の職員の給与費などに関して、住民に対して負担を転嫁することを禁じる規定(27条の4)もある。
[田中 治]
地方公共団体は,国とともに国民や住民の人権の保障と実現のための一種の統治団体(公法人。地方自治法2条1項)として多種・多様な行政を行う主体であるが(同法2条2,3項各号参照),地方財政法は,このような行政の経済的・物的基盤としての財政(地方財政)の運営や,国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め,それによって地方財政の健全な運営を図り,地方自治の発達に資することを目的として,地方自治法の付属関係法律として制定された(1948公布)。旧憲法下においては,地方行政・財政の運営の方針は命令や中央政府の行政措置に基づいていたが,現行憲法は地方自治を保障しその確立を図る目的から(日本国憲法第八章参照),地方公共団体の組織および運営に関する事項は〈地方自治の本旨〉に基づいて法律で定めることとした(92条)。地方財政法は,地方自治法とともにこのような憲法の趣旨を実現する法律であり,とくに,中央政府の行政措置によって干渉ないし影響を受けてきた地方財政の自主性と健全性を確保するために,一方で地方公共団体が国や他の地方公共団体の財政に累を及ぼす施策を行ってはならないとしつつ,他方で国が地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない,とする基本原則を定めている(2条)。
このような基本原則の下に,この法律は,国と地方公共団体の行政責任(事務配分等)に対応した国費と地方費の負担区分に関する原則等を定め,また,地方公共団体(道府県と市町村)間の財政調整に関する規定を置いている。しかし,とくに国と地方公共団体との負担区分(財政調整)にかかわって,国の負担は義務的なものとそうでないものがあり,また義務的負担分について別途法律によって裁量的基準が設けられたり,また,これらの負担分は,いわゆる国庫支出金として一括して補助金等と呼ばれ,〈補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律〉(1955公布)に基づく交付決定という複雑な手続を必要とするところから,必ずしもこの法律の趣旨が生かされていない,という問題がしばしば指摘されている。
→地方財政
執筆者:福家 俊朗
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