地獄の季節(読み)ジゴクノキセツ(その他表記)Une Saison en enfer

デジタル大辞泉 「地獄の季節」の意味・読み・例文・類語

じごくのきせつ〔ヂゴクのキセツ〕【地獄の季節】

原題、〈フランスUne saison en enferランボーによる散文詩集。1873年完成の、生前に出版された唯一詩集。自費出版作品として印刷されたが、費用未払いのため大半著者に引き渡されず、20世紀になってから印刷所の倉庫内で発見された。ベルレーヌとの別れの後に書かれた全9編の詩からなり、内面危機をダイナミックに表現した著者の代表作地獄の一季節

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精選版 日本国語大辞典 「地獄の季節」の意味・読み・例文・類語

じごくのきせつヂゴクのキセツ【地獄の季節】

  1. ( 原題[フランス語] Une Saison en enfer ) フランスの詩人、アルチュール=ランボーの散文詩集。一八七三年作。堕地獄苦悩と無垢への渇望を歌いあげた内面的自伝の書。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地獄の季節」の意味・わかりやすい解説

地獄の季節
じごくのきせつ
Une Saison en enfer

フランスの詩人アルチュール・ランボーの散文詩集。1873年作。同年10月、ベルギーブリュッセル、ポート書店にて印刷完了。しかし、自費出版の費用未払いのため、著者の手に渡ったのは見本の数冊のみ。残りの約500部は、死後10年の1901年、同書店倉庫より発見された。散文詩全9編の主題は、生、愛、見者の詩法を通じてのカトリック西欧文明への対決。詩の発生の場が、西欧近代の引き裂かれた魂の修羅場にあることを証明するように、怒りと苦悩に彩られ、矛盾撞着(どうちゃく)に満ちたことばが強烈なエネルギーを放つ。同時に、詩句の美しい響き、演劇的構成、「序」の反逆から終章「訣別(けつべつ)」の新たな決意に至るまでの地獄の時間と、全章の外縁を流れる春から秋への客観的時間の対比の妙など、詩的意識のみごとな結晶といえよう。『地獄の一季節』『ある地獄の季節』の訳名もある。

[中安ちか子]

『渋沢孝輔他訳『世界文学全集55 地獄の一季節』(1981・講談社)』『小林秀雄訳『地獄の季節』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地獄の季節」の意味・わかりやすい解説

地獄の季節
じごくのきせつ
Une Saison en enfer

フランスの詩人アルチュール・ランボーの詩集。 1873年刊。「地獄の夜」「錯乱」など9章から成る散文詩。自身で出版した唯一の本で,著者 18歳のときの作品。銃撃事件で終るベルレーヌとの放浪生活を通じ,最高にまで高められたランボーの詩的精神が,汚辱と苦悩,生への渇望,「言葉の錬金術」となって激しく歌われている。フランス象徴主義最大の傑作の一つとして,シュルレアリスムなど 20世紀の詩に多大の影響を与えた。

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デジタル大辞泉プラス 「地獄の季節」の解説

地獄の季節〔戯曲〕

流山児祥の戯曲。1973年、自身の演出により、主宰する劇団「演劇団」が浅草木馬館にて初演。3部作。

地獄の季節〔小説〕

英国の作家ジャック・ヒギンズの冒険小説(1989)。原題《A Season in Hell》。

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