地球儀(読み)チキュウギ(その他表記)globe

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デジタル大辞泉 「地球儀」の意味・読み・例文・類語

ちきゅう‐ぎ〔チキウ‐〕【地球儀】

地球をかたどって作った模型。球の表面経線緯線水陸分布などが記入され、両極を通る軸の周りを回転するようにしてある。

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精選版 日本国語大辞典 「地球儀」の意味・読み・例文・類語

ちきゅう‐ぎチキウ‥【地球儀】

  1. 〘 名詞 〙 地球の小模型。鉛直線から約二三・五度傾いた軸(地軸に相当する)を中心に回転する球で、表面には海・陸・経緯線・地名などが記されている。
    1. [初出の実例]「地球儀を廻はし抔して見せければ日本人速に日本国のある場所を見出し得たり」(出典:海外新聞別集(1862)下)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地球儀」の意味・わかりやすい解説

地球儀
ちきゅうぎ
globe

地球を球形にかたどって、その表面に経緯線や水陸分布および地形その他の地球表面の状態を表したもの。

 地球は球体をなしているので、これを水平面に表現した地図に比べていろいろな点で利点をもっている。すなわち、地球儀では、広い範囲の地表面の状況を距離、面積、形のひずみがないように表現できるが、平面である地図では不可能である。地球儀は球体であるから、地表上の位置関係や地球の運動、昼夜や季節の関係、方位の関係、太陽との関係などを理解するには、地図よりもはるかに便利である。また、地球儀は、大圏航路や無線方向の探知などにも利用される。一方、地球儀では、縮尺の大きいものはつくりがたいこと、携帯に不便であること、全世界を一度に同時に観察できないことなどが、地図に比べて劣る点である。

 地球儀は、金属、石膏(せっこう)、プラスチック、紙などで作製され、中空であって、約23.5度傾いた地軸の北極および南極の部分に子午環(緯度目盛りのついた輪)が取り付けられ、赤道から両極へそれぞれ90度に目盛りされているものが多い。そして地軸の周りを自転できるようになっている。地球儀は一般には、一定の経度帯(たとえば経度15度の幅)ごとに、舟形の地図片をつくり、それをはり合わせてつくられる。

 最初に地球儀がつくられたのは、地球球体説が提唱されてからであって、古代ギリシアや中世のアラビアであったと称されている。現存する最古の地球儀は、これよりはるかに遅れて、1492年にドイツの地理学ベハイムが作製した直径51センチメートルの金属製のもので、ドイツ、バイエルン州のニュルンベルク博物館に保存されている。この現存する最古の地球儀の表面に描かれた地図は、ローマ時代の天文学者プトレマイオスの世界地図に依拠しているが、マルコ・ポーロの『東方見聞録』によって、中国や日本をアジアの東端に表現し、ポルトガルの航海者B・ディアスアフリカ探検の結果を取り入れ、アフリカを喜望峰を南端として表現しているなど、当時としては新知識を取り入れたものであった。その後、「新大陸発見」時代に入り、いろいろな地球儀が作製されている。

 日本では、1591年(天正19)に天正遣欧使節(てんしょうけんおうしせつ)が豊臣(とよとみ)秀吉にヨーロッパ製の地球儀を献上したのが、日本に現れた地球儀の最初で、江戸時代に入ってからは、国内でも各種の地球儀がつくられるようになった。

[市川正巳・村田明広]

『渡辺一夫著、清水靖夫監修『やさしい地図入門5 地球儀たのしさ入門』(1998・ポプラ社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「地球儀」の意味・わかりやすい解説

地球儀 (ちきゅうぎ)
globe

地球全体を縮小した立体模型。経緯線,海陸の配置,地名などが記入されている球で,南北両極の支点によって〈子午環〉につながっており,回転可能である。子午環は地軸を通る大円(子午線)に沿う円環で,緯度目盛が刻まれており,これと直角をなす〈地平環〉の内側の溝にはめこまれており,この溝を通る方向の回転は自由である。地平環は架台の水平面と一致する円環で,上面に子午環との交点(北点,南点)を基準とする方位角,黄道上の太陽の位置その他が示されている。北極には時刻目盛のある小円盤の〈時輪〉と自由に方向を変えうる指針とがとりつけられている。また一端が子午環上を移動する〈四分円弧〉は,球面上の距離および地平からの高度を知るためのものである。これらは従来使われてきた本式の地球儀の構造であるが,児童・生徒の学習用,室内装飾用の略式地球儀では,ふつう地平環はなく,子午環も半円のみとなっている。球の本体には厚紙,金属,プラスチックなどが用いられ,多くは断裂多円錐図法による経度幅30°の球儀用紙片(舟形図)を貼りつける。接合の困難な両極部分には別に用意した正距方位図法による円形紙片を貼りつける。印刷術発達以前は木製・張子製の球に直接図形を描いたり,真鍮製の球に彫刻したりした。また空気でふくらますビニル製,かつての傘骨式など開閉自在のものもある。地球儀は距離,方角,面積,形状を正しくあらわす点で地図に勝るが,いかに大型のものでも縮尺が極端に小さく,地図の代用とはならないが,かつては大洋航海の船舶に必要な儀器の一つとして重んじられた。

 世界最初の地球儀は,前160年ころマロスのクラテスKratēs Mallōtēsによって作られたと伝えられている。ギリシア科学を受けついだイスラム圏でも地球儀は作られ,1267年元代の中国に伝来しているが,中世イスラム圏製の地球儀の現存は知られていない。天球儀は1080年製のものがフィレンツェに,1279年製がドレスデンに残っている。現存最古の地球儀は1492年作成のベハイムの作品で,ヨーロッパとアジアの間の大洋の西寄りにジパング島が描かれている。地球儀の日本への伝来の正確な年代は不明ながら,1580年(天正8)すでに織田信長は地球儀を所有している。
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百科事典マイペディア 「地球儀」の意味・わかりやすい解説

地球儀【ちきゅうぎ】

地球を模型的に表現する小球。球の表面に経緯線を引き,地球表面の地理的状態を描いたもの。付属器具として北極,南極にとりつけられた半円または全円の子午環を有し,球が自転できるようにしてある。支柱によって赤道をとりまくようにつけられた地平環を有するものもある。地理学の学習や研究に使う。現存する最古の地球儀は1492年マルティン・ベハイムによってつくられた(径507mm)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地球儀」の意味・わかりやすい解説

地球儀
ちきゅうぎ
globe

地球表面の状況を表現した球体。通常,地軸は鉛直方向に 23°27′傾かせ,地軸のまわりを任意に回転できるようにした子午環がある。子午環のほか赤道環のついたものもある。地球儀の表面は一般の世界図と同様の表現がされている。地球儀の表面は多円錐図法によってつくられた舟形の地図を球上に貼合せてつくる。

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