地震被害早期評価システム(読み)ジシンヒガイソウキヒョウカシステム

デジタル大辞泉 の解説

じしんひがいそうきひょうか‐システム〔ヂシンヒガイサウキヒヤウカ‐〕【地震被害早期評価システム】

内閣府地震防災情報システムを構成するシステムの一。地震発生直後に被害規模の概要短時間で推計する。気象庁からの地震情報を受けて、全国市区町村の地形地盤建築物人口などのデータベースから震度分布や被害を推計し、地震発生後30分以内に推計結果を出力する。平成8年(1996)4月から運用開始。EES(Early Estimation System)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

地震被害早期評価システム
じしんひがいそうきひょうかしすてむ

地震が発生したときにどの程度の被害が発生しているかを短時間に推計するシステムの一種。EES(Early Estimation System)の略称でよばれ、内閣府防災担当が設置、1996年(平成8)4月から運用している。1995年の阪神・淡路大震災のとき、被害の状況を把握するのに手間どり、国や自治体救援等の初動対応の立ち上げにさまざまな困難を生じたことを教訓として整備された。地震発生直後に、気象庁から発表される震源マグニチュード、各地の震度の情報に加え、あらかじめ用意した被害が予想される地域のGIS(地理情報システムGeographic Information System)情報として1キロメートル程度のメッシュごとの地形、地盤、地質、建築物の築年数や構造、時間帯別の人口分布などを基に、家屋の被害や、人的被害を地震発生後おおむね30分以内に予測し、被害の大まかな規模を把握することにより、救援など応急対策や復旧対策に役だてることを目的としている。地震による災害の予測に加え、1999年度からは、気象庁が津波の高さを数値化して予報する量的津波予報を開始したのに合わせ、津波による浸水域の予測も開始した。

 被害の発生は、現実にはさらに細かいさまざまな条件に左右されるため、実際の予測はむずかしく、2000年(平成12)に発生した鳥取県西部地震では、1995年兵庫県南部地震と同規模の地震であったこともあり、死者200人を予測したが、実際には死者はなかった。2011年の東北地方太平洋沖地震では、死者1000人を予想し、初動対応などの立ち上げに貢献したが、地震動による被害の予測は過大となり、津波による被害の予測はうまくいかなかった。このように現在の技術では、被害予測は1桁以上の誤差を伴うことがあり、それを踏まえて初動対応などに利用する必要がある。また、検証や改善すべき点が多く残されており、地震や津波と被害の関係、震度と建物の種類別の被害との関係などの検討のほか、衛星データを用いて被害を想定する技術の開発も行われ、予測の精度向上に向けた努力が続けられている。

 なお被害の予測は、電気、水道、ガス、交通網などの社会インフラごと、自治体など分野ごとに必要性が異なることから、それぞれの目的に特化した被害予測システムの開発も行われており、消防庁が自治体向けに開発した簡易型地震被害想定システムもその一例である。

[浜田信生]

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