改訂新版 世界大百科事典 「人口分布」の意味・わかりやすい解説
人口分布 (じんこうぶんぷ)
population distribution
人口の地域的分布状態をいう。ある国あるいはある地域における人口分布は,地形や産業の発達などによって歴史的に強い影響を受ける。しかし人口学的にみると,人口分布はその地域の自然増加(出生率と死亡率の差)率と社会増加(転出率と転入率の差)率によって決定される。自然増加率は一般に国や地域によって著しい差がある。自然増加率が地域人口の分布に影響することはいうまでもない。しかし,経済的・社会的・政治的変動によって顕著な変化をする人口移動が,地域人口の増減に大きな影響をもたらし,人口分布に変化を与えることも多い。したがって,自然増加と社会増加が地域人口に与える影響は,地域の特徴と時代によって異なっている。たとえば,1960年から65年の5年間の神奈川県の社会増加率は20.6%で,自然増加率8.1%の2.5倍以上であり,神奈川県人口の増加に対して人口移動が圧倒的な役割をもっていたことがわかる。同じ時期に秋田県の社会増加率はマイナス8.3%で,自然増加率の4.1%をはるかに上回り,同県人口を減少させている。しかし,近年の人口移動は全国的に減少する傾向が著しく,県人口の増加に対し,自然増加率の役割が増大している。
日本人口の地方別分布の動向をみると,南関東(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県)と西近畿(大阪府,京都府,兵庫県)の人口の全国人口に占める比重が増大し,その他の地方では一般に低下している。1950年と80年を比較して,南関東が15.5%→24.5%へと増大しているのに対し,東北10.7%→8.2%,九州・沖縄15.5%→12.0%へと著しい減少を示している。このような人口分布の状態を表す方法としては,人口密度,人口重心center of population(当該地域を平面と考え,そこに分布する個々の人間の重さを同じと仮定した場合に,この地域全体を水平に支える点の位置),人口ポテンシャルpopulation potential(人口分布が相互になんらかの影響を与えるエネルギーをもつと想定し,その状態を物理的概念に基づいて表現した結果),ジニ係数等がある。また,都市,農村,都市圏といった地域の特性によって人口分布の地域区分が行われている。
→人口
執筆者:黒田 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報