日本大百科全書(ニッポニカ) 「地震防災対策特別措置法」の意味・わかりやすい解説
地震防災対策特別措置法
じしんぼうさいたいさくとくべつそちほう
阪神・淡路大震災を教訓に、全国どこでもおこりうる地震災害に備え、地震予知を前提とせずに地震防災対策を進めるために1995年(平成7)6月に議員立法で成立し、7月に施行された法律(平成7年法律第111号)。法律の三本柱は、(1)地震防災対策の実施のための目標の設定と地震防災緊急事業五か年計画による地震防災対策施設の緊急整備、(2)地震に関する調査研究を進めるための地震調査研究推進本部の設置、(3)自治体による地震や津波の災害予測図(ハザードマップ)の作成と避難路の整備や住民への周知を行うこと、である。
地震防災対策の目標の設定とは、想定される地震災害を明らかにし、災害軽減のために各種の地震防災対策施設の整備を行うことで、その内容は各自治体の地域防災計画のなかで定めることになっている。地震防災対策施設として避難地、避難路、消防用施設など29の施設が緊急整備の対象とされ、そのうち消防施設、公立小中学校、社会福祉施設等九つの施設の耐震改修などについては、国庫補助率のかさ上げを行うことになった。かさ上げの適用期間は2020年末まで延長されている。そしてこれら地震防災対策施設の緊急整備は、都道府県が策定する五か年計画で推進することになり、これまで1次、2次、3次、4次の計画が実施され、2017年(平成29)時点で第5次の計画が進められている。この途中で、小中学校の校舎の耐震化についての補助率の引上げや、地域防災計画における被害軽減のための長期目標の設定、ハザードマップづくりと周知などの施策も盛り込まれた。
2番目の柱である地震に関する調査研究を進めるための地震調査研究推進本部は、文部科学省に設置され、文部科学大臣が本部長を務めることが定められ、本部の下に政策委員会、地震調査委員会を設け本部の果たすべき役割が規定されている(「地震調査研究推進本部」の項参照)。また気象庁が地震に関する各種の観測データを収集し、本部に報告することを義務づけている。
法律制定後、特定の地震を対象に、特定の地域を指定して地震防災対策をさらに促進するために、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(2002)、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(2004)、南海トラフ巨大地震対策特別措置法(2013)、首都直下地震対策特別措置法(2013)などがこれまでに制定され、地震防災対策特別措置法で規定された防災対策に加え、地震と地域の条件を反映した重点的な防災対策の実施が進められている。
[浜田信生 2017年6月20日]