広義には酸の水酸基を塩素で置換した化合物の総称で,カルボン酸塩化物RCOCl,スルホン酸塩化物RSO2Clなどがある。単に酸塩化物といえばカルボン酸塩化物をさすことが多く,塩化アシルacyl chlorideともいう。命名はアシル基RCO-名の前に〈塩化〉をつける。たとえばCH3COClを塩化アセチルと呼ぶ。低位の酸塩化物は刺激臭をもつ無色の液体で,湿気にあうと発煙する。高位のものは固体で比較的安定である。ふつうカルボン酸に五塩化リンや塩化チオニルなどの塩素化剤を作用させて合成する。
酸塩化物の反応性は非常に高く,水と反応してカルボン酸,アミンやアンモニアと反応して酸アミド,アルコールと反応してエステルを生成する。また,ルイス酸(電子対受容体)の触媒存在下でベンゼン誘導体と反応して芳香族ケトンを生じる(フリーデル=クラフツ反応)など,酸無水物と同様にアシル化剤として有機合成に広く用いられる。
執筆者:井畑 敏一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
塩化アシルともいう.カルボン酸のカルボキシル基に含まれるヒドロキシ基を,塩素で置換した化合物.炭化水素基をRで表せば,一般式はRCOClとなる.カルボン酸やカルボン酸の塩に,五塩化リン,塩化チオニルなどの塩化物を作用させると得られる.非常に反応性の高い化合物で,水,アルコール類,アンモニア,カルボン酸,グリニャール試薬などと反応し,それぞれカルボン酸,エステル,アミド,酸無水物,ケトンなどを生じ,また,芳香族炭化水素に対しては,塩化アルミニウムの存在下で,フリーデル-クラフツ反応によって芳香族ケトンを生じる.硫酸やリン酸の塩化物も酸塩化物であり,アシル化剤として合成反応に広く利用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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