酸塩化物(読み)さんえんかぶつ(英語表記)acid chloride

精選版 日本国語大辞典 「酸塩化物」の意味・読み・例文・類語

さん‐えんかぶつ ‥エンクヮブツ【酸塩化物】

〘名〙 酸の水酸基塩素で置換した化合物カルボン酸などに五塩化燐、三塩化燐などの塩素化剤を反応させて得る。刺激臭のある無色液体で、空気中で発煙する。アシル化剤として有機物合成に用いられる。塩化アシル。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「酸塩化物」の意味・読み・例文・類語

さん‐えんかぶつ〔‐エンクワブツ〕【酸塩化物】

カルボン酸カルボキシル基中の水酸基塩素置換された化合物総称。一般式RCOClで表される。

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改訂新版 世界大百科事典 「酸塩化物」の意味・わかりやすい解説

酸塩化物 (さんえんかぶつ)
acid chloride

広義には酸の水酸基を塩素で置換した化合物の総称で,カルボン酸塩化物RCOCl,スルホン酸塩化物RSO2Clなどがある。単に酸塩化物といえばカルボン酸塩化物をさすことが多く,塩化アシルacyl chlorideともいう。命名はアシル基RCO-名の前に〈塩化〉をつける。たとえばCH3COClを塩化アセチルと呼ぶ。低位の酸塩化物は刺激臭をもつ無色の液体で,湿気にあうと発煙する。高位のものは固体で比較的安定である。ふつうカルボン酸に五塩化リンや塩化チオニルなどの塩素化剤を作用させて合成する。

酸塩化物の反応性は非常に高く,水と反応してカルボン酸,アミンアンモニアと反応して酸アミドアルコールと反応してエステルを生成する。また,ルイス酸(電子対受容体)の触媒存在下でベンゼン誘導体と反応して芳香族ケトンを生じる(フリーデル=クラフツ反応)など,酸無水物と同様にアシル化剤として有機合成に広く用いられる。
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化学辞典 第2版 「酸塩化物」の解説

酸塩化物
サンエンカブツ
acid chloride

塩化アシルともいう.カルボン酸のカルボキシル基に含まれるヒドロキシ基を,塩素で置換した化合物.炭化水素基をRで表せば,一般式はRCOClとなる.カルボン酸やカルボン酸の塩に,五塩化リン,塩化チオニルなどの塩化物を作用させると得られる.非常に反応性の高い化合物で,水,アルコール類,アンモニア,カルボン酸,グリニャール試薬などと反応し,それぞれカルボン酸,エステル,アミド,酸無水物,ケトンなどを生じ,また,芳香族炭化水素に対しては,塩化アルミニウムの存在下で,フリーデル-クラフツ反応によって芳香族ケトンを生じる.硫酸やリン酸の塩化物も酸塩化物であり,アシル化剤として合成反応に広く利用されている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸塩化物」の意味・わかりやすい解説

酸塩化物
さんえんかぶつ
acid chloride

カルボン酸のカルボキシル基の水酸基を塩素で置換した化合物の総称。一般式 RCOCl 。一般にカルボン酸にリンか硫黄の塩化物を作用させると生成する。酸塩化物はきわめて水と反応しやすく,空気中の湿気と反応して酸と塩化水素とに分解する。また有用なアシル化剤で,アルコール,アミンと激しく反応して,それぞれエステル,酸アミドになる。

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百科事典マイペディア 「酸塩化物」の意味・わかりやすい解説

酸塩化物【さんえんかぶつ】

酸の水酸基を塩素で置換した化合物の総称。通常カルボン酸の塩化物をいう。塩化アセチルCH3COCl,塩化ベンゾイルC6H5COClなど。酸無水物と同様,アンモニアと反応して酸アミドを,アルコールと反応してエステルを生ずる。加水分解すると酸と塩化水素になる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸塩化物」の意味・わかりやすい解説

酸塩化物
さんえんかぶつ

酸ハロゲン化物

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栄養・生化学辞典 「酸塩化物」の解説

酸塩化物

 →酸クロリド

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