塩化鉛(読み)エンカナマリ

化学辞典 第2版 「塩化鉛」の解説

塩化鉛
エンカナマリ
lead chloride

】塩化鉛(Ⅱ):PbCl2(278.11).二塩化鉛ともいう.鉛塩の水溶液塩酸または塩化物水溶液を加えて白色斜方晶系結晶として得られる.密度5.85 g cm-3.融点501 ℃,沸点950 ℃.冷水,エタノールなどに難溶,熱水に易溶.水100 g に対する溶解度は0.6728 g(0 ℃),3.342 g(100 ℃).希塩酸には水よりも難溶であるが,濃塩酸にはH2[PbCl4]をつくって溶ける.アルカリによって水酸化鉛沈殿するが,過剰には鉛酸塩となって溶ける.アンモニアとはいろいろの割合の付加物をつくり,塩化アルカリとは錯塩をつくる.鉛塩,クロム酸鉛顔料の製造,分析試薬に用いられる.有毒.[CAS 7758-95-4]【】塩化鉛(Ⅳ):PbCl4(349.01).四塩化鉛ともいう.塩化鉛(Ⅱ)を濃塩酸中に懸濁させて塩素を通じ,ついで塩化アンモニウムを加えて得られるヘキサクロロ鉛(Ⅳ)アンモニウム(NH4)2PbCl6の沈殿を少量ずつ濃硫酸中に加えると,黄色油状の液体として得られる.密度3.18 g cm-3(0 ℃).融点-15 ℃.固体は黄色の分子結晶加熱すると105 ℃ 付近で爆発して塩化鉛(Ⅱ)と塩素とに分解する.湿気のある空気中では加水分解して塩化水素白煙を発生する.少量の水とは各種の不安定な水和物をつくるが,多量の水では分解して酸化鉛(Ⅳ)と塩酸を生じる.濃塩酸,クロロホルムなどの有機溶媒に可溶.[CAS 13463-30-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化鉛」の意味・わかりやすい解説

塩化鉛
えんかなまり
lead chloride

鉛と塩素の化合物。酸化数Ⅱ、Ⅳのものがある。

(1)塩化鉛(Ⅱ)(二塩化鉛) 鉛(Ⅱ)塩の水溶液に塩化物イオンを加えると沈殿する。熱水にはかなり溶ける。無色針状晶。加熱融解すると600~800℃で黄色となる。さらに熱すると橙(だいだい)色となる。冷水に難溶。また、希塩酸には水より溶けにくいが、濃塩酸には水より溶けやすい。

(2)塩化鉛(Ⅳ)PbCl4(四塩化鉛) 塩化鉛(Ⅱ)を濃塩酸に溶かした溶液(H2PbCl4を含む)に塩素ガスを通し、これに塩化アンモニウムを加えて生じる黄色の沈殿(NH4)2PbCl6を冷たい濃硫酸で分解すると得られる。黄色油状の液体、常温で不安定でPbCl2とCl2に分解する。アンモニアと付加化合物をつくる。水と反応してPbO2となる。濃塩酸に溶ける。クロロホルムなどの有機溶媒に溶ける。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「塩化鉛」の意味・わかりやすい解説

塩化鉛 (えんかなまり)
lead chloride

一塩化鉛(Ⅰ)PbCl,二塩化鉛(Ⅱ)PbCl2,四塩化鉛(Ⅳ)PbCl4に対する総称であるが,通常は二塩化鉛(Ⅱ)を指すことが多い。二塩化鉛(Ⅱ)は,天然にもコッタンナイトとして産するが,鉛塩の水溶液に塩酸または塩化物水溶液を加えると白色の斜方晶系の沈殿として得られる。融点501℃,沸点950℃。冷水にはあまり溶けないが熱水にはよく溶ける。濃塩酸にはPbCl42⁻イオンを生じて溶ける。アルカリを加えると水酸化鉛を沈殿するが,過剰のアルカリには鉛酸塩となって溶ける。アルコールには溶けないがグリセリンにはよく溶ける。
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