夏休み(読み)なつやすみ

日本大百科全書(ニッポニカ)「夏休み」の解説

夏休み
なつやすみ

一般に、学校教育法施行令第29条「学期及び休業日」でいう夏季休業日(学校において授業を行わない日が休業日)のこと。公立学校(大学を除く)の学期および夏季、冬季や学年末などの休業日については、当該学校を設置する教育委員会、つまり、学校を設置する市町村または都道府県の教育委員会で定めている。公立大学法人の設置する高等専門学校では、公立大学法人の理事長が定めている。また、私立小学校における学期及び休業日は、学校教育法施行規則第62条より、当該学校の学則で定めるとされている。

 このことから、夏休みといっても全国一律ではなく、その土地の気候や風土によって期間の長短がある。たとえば東京都の区市町村や都立学校の場合、2009年度(平成21)では、都立中学校では東京都立学校の管理運営に関する規則、区市町村立小中学校では各区市町村教育委員会の管理運営に関する規則により、7月21日から8月31日までを夏季休業日としている。全国的にもほぼ同様な期間となっているが、豪雪地帯や寒冷地では冬季休業日を長くし、その分だけ夏季休業日を短く(たとえば北海道では、7月26日ごろから8月18日ごろまで)している。また、最近では授業日の確保等の理由から、東京都の葛飾区のように夏休みを7月21日から8月24日までと、独自の期間にしている市区町村も存在している。

[田中真秀・浜田博文]

目的

夏休みは世界的に広く実施されており、その目的は国によって異なる。おもな目的は、夏季の暑熱の回避となるが、伝統的な慣習の存在(盆行事など)等が目的となることもある。つまり、夏休みは、高温多湿な時期に、児童・生徒を正規の授業から解放し、その心身に休養を与えるために設けられている。したがって教職員にとっては勤務を要しない休日ではない。つまり、法律や条例等に夏季休業日を教員の休日とするという規定はない。児童・生徒に対する授業を行わない休業日といえども教員は勤務に服さなければならない。

 夏休みはこのような趣旨で設けられているが、児童・生徒が長期間の休業日を活用し、心身を鍛えたり、学校ではできない趣味や研究に没頭したり、自然に触れる経験をもったりするよい機会ともなっている。

 その反面、朝起きるのが遅くなり夜更かしをするなど生活が不規則となり、行動範囲が広がって非行を誘発したり、気分が高揚して非行にはしるケースも少なくない。同時に、無謀な水遊びやスリルを求めての危険な遊びによって不慮の事故が起こることもある。

 学校ではこのような問題や事故を防止するだけでなく、望ましい夏休みの過ごし方についての指導を行っている。しかし、夏休みに実際の指導をするのは保護者であるため、事前に学校と家庭とが十分に連絡をとり、家庭での指導が成果をあげるよう配慮する必要がある。地域によっては、学校、保護者、地域住民が協力して、前記のような事故を防止するため、パトロール・点検などの各種の活動を行っているケースもある。

[田中真秀・浜田博文]

指導

授業期間では、子供の生活は学校教育のペースで営まれているが、夏休みになると学校という規制がなくなり、保護者が子供の指導にあたらなければならなくなる。1990年ごろから、夏休みに学校ではできない読書体験、自然体験、価値形成体験をして欲しいという保護者からのニーズに応えて、長期キャンプに参加させる、朝から晩までサマー・スクールに通わせるなどといった生活のペースの乱れを抑制するプログラムも増えている。また、2000年ごろからは、地域や市町村をあげての夏休みのイベントを増やすことで、子供たちを非行から遠ざける動きもある。

 夏休みを迎える親としては、子供たちに意義のある休業期間とするため、次のような手だてを講じることがたいせつである。

(1)子供が自分にとって、休養、遊び、心身の鍛練、家事分担、勉強などのうち、もっとも優先するものは何か、またそれぞれのバランスをどうとるかをよく考え、その子供にとってよい夏休みの計画(日々の日課を含む)をたてるよう指導する。

(2)子供自身が日々の生活をのびのびとしたなかに、節度あるものとするよう、計画を活用して自主的に生活することを学ばせる。

(3)学校が実施するプール指導などのほか、社会教育団体などの主催する施設への参加を奨励し、豊かな経験を自ら求めるよう助言する。

(4)家族間の心の交流を図るためのくふうをする。

[田中真秀・浜田博文]

労働問題としての夏休み

欧米諸国では、高温で疲労の蓄積しやすい夏季に、2週間から1か月程度の長期休暇をとる習慣が定着している。フランスのバカンスがとくに知られている。日本においても、盆休みを中心に夏季休暇は定着しているが、日数は欧米諸国と比べて格段に短い。

 厚生労働省の「平成19年度就労条件総合調査」によると、日本において夏季休暇用特別休日を採用している企業は48.7%である。欧米諸国では、夏季休暇の取得は有給休暇の利用によるのが一般的であるが、日本においては特別休日や休日の振り替え、有給休暇の一斉取得などを絡ませて実施している企業が多く、これによって一部の大企業では10日以上の夏休みを実施する場合もみられる。日本の場合、夏季は高温であるばかりか多湿であり、他の諸国以上に疲労が蓄積しやすく、夏休みの定着とその拡大は労働者の健康を維持・増進するうえできわめて重要である。

[湯浅良雄]

『宇留田敬一・河野重男編『小学校学校行事の計画と展開』(1981・明治図書出版)』『宇留田敬一・河野重男編『中学校学校行事の計画と展開』(1983・明治図書出版)』『労働大臣官房政策調査部編『賃金労働時間制度等総合調査』各年版(労務行政研究所)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の夏休みの言及

【休暇】より

…休業日とは,学校で学習する子ども・青年の立場から,授業が行われない日をいい,そこに勤務する教職員の条例上の〈勤務を要しない日〉とは,必ずしも一致しない。たとえば,夏季休業日などは,子どもたちにとっては〈夏休み〉であるが,教職員にとっては〈勤務を要する日〉である。 しかし,こうした規定は近代的な学校制度が出発した明治初期から存在したのではない。…

※「夏休み」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

国立国会図書館

国立国会図書館法に基づいて設置された図書館。1948年の設立当初は赤坂離宮を使用したが,1961年東京都千代田区永田町に新築移転した。国立図書館であり同時に国会図書館でもあるため国会の立法行為に関する...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android