外国語教育(読み)がいこくごきょういく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

外国語教育
がいこくごきょういく

児童が成長の過程で自然に習得する母国語以外の言語を教育すること。その目的は意志伝達のほか,言語の理解を通じて他国の諸文化を理解することにもある。日本における漢文教育,ヨーロッパのラテン語教育などは直接の伝達手段としてよりも,もっぱらその背景にある文化に接することを目的としていた。現代外国語の教育が学校教育に取入れられたのは一般的には 18世紀以後である。教授方法は文法,訳読法と直接教授法とに2分されるがオーラル・メソッドなど直接教授法が主流となりつつある。日本では主として英語,ドイツ語フランス語が教えられるが,諸外国でも国連公用語である英語,フランス語,ロシア語スペイン語,中国語およびドイツ語の1ないし2を一般教養として教えるところが多い。かつては中等教育段階からと考えられたが,現代ではその開始時期は早められる傾向にある。

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世界大百科事典 第2版の解説

がいこくごきょういく【外国語教育】

外国語を教育する一般的目標は,(1)言語としての外国語を学ぶことによって学生・生徒の言語意識を鋭くし,国語に対する理解と意識を高め,(2)言語の表現する内容の理解を通じて諸外国の文化に接触せしめ,これによって国民文化をいっそう深く理解せしめることである。学校における外国語教育には,したがって,特定部門を専攻するための基礎を修得させる実用的・専門的教育と,一般教養的な教育との2方向が包含されている。 日本の外国語教育の歴史は,広義には洋学輸入の歴史である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

外国語教育
がいこくごきょういく

この地球上には方言を除いて約3000もの自然言語が使われているといわれるが、そのうちのある言語を、それを母国語とする国とか社会とかで教える活動が母国語教育となり、それを母国語としない国とか社会とかで教える活動が外国語教育あるいは第二言語教育と位置づけられる。

外国の外国語教育の歴史

ヨーロッパ諸国においては外国語教育は早くから行われていたが、それはおもにギリシア語やラテン語などによる古典的教養や宗教教育のためであった。外国語教育が組織的に学校教育に取り入れられたのは18世紀後半のことであり、現代外国語が教科目に入れられたのは19世紀以後のことである。一方アメリカでは、近代語教育の必要性が早くから痛感され、なんらかの形で外国語が教えられたのは18世紀後半のフランス語であり、ついでイタリア語、スペイン語、ポルトガル語など、そしてその後ドイツ語が教えられた。こうして1860年代ごろには、アメリカでは主要なハイスクールやアカデミーで現代外国語がカリキュラムにその位置を占めるに至った。

わが国の外国語教育の歴史

われわれ日本人が母国語である日本語以外の言語すなわち外国語を学んだという観点からすれば、4世紀ごろから漢字漢文を学び始めたとする説があるし、最初の西洋語であるポルトガル語に接したのは、1543年(天文12)ポルトガル人の種子島(たねがしま)漂着の際であった。そして17世紀後半にはオランダ語に移り、1808年(文化5)、イギリスの軍艦フェートン号が長崎に不法侵入した事件をきっかけに英語学習の必要性が叫ばれるようになった。外国語科、つまり教科としての外国語は、少なくとも中等学校に関する限り、1872年(明治5)の学制に「外国語学」が教科の名称として含められて以来である。その外国語の種類も、第一外国語として英語、第二外国語としてドイツ語またはフランス語を基調としながら、学校教育に位置づけられてきた。

外国語教育の目的・特性・教授法

母国語を異にする人々の間の交流がますます盛んになってきた現在、世界の中等学校において外国語教育が行われていない国はほとんどないといってよい。一般的にいえば、外国語教育はいずれの国においても、知的・社会的訓練とともに一般教養として、また、互いに意志、感情、思想を疎通させる道具を得るという実用的目的をもって行われる。国際共通語といわれる英語の場合、この実用性がいっそう強調されている。
 外国語教育には、母国語教育に共通する側面すなわち言語観と、外国語教育にしかみいだせない特性とが存在する。前者については、たとえば、言語の本質は音声であり文字は二次的表出手段であるとの見方があり、後者については、たとえば、学習者がすでに第一言語(母国語)を習得したのちに開始すること、多くは学校教育において限られた期間内になされること、などがあげられる。
 外国語教授法としては、ギリシア語やラテン語などの古典語の学習方法をそのまままねたといわれる文法・訳読式教授法が古くから行われてきたが、新しい言語観に基づく音声重視の教授法が次々と導入され、今日では種々の方法の優れたところを折衷して教えているのが実状であるといってよい。今後の課題としては、教授法の改善とともに適切な教材の開発、時間数や外国語学習開始年齢の検討などがある。[垣田直巳]
『W・F・マッケイ著、伊藤健三・和田正吾・池田重三訳『言語教育分析』(1979・大修館書店)』

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最新 心理学事典の解説

がいこくごきょういく
外国語教育
foreign language education

外国語とは,学習者が属するコミュニティで日常のコミュニケーションの手段として使用されることのない言語を指す。一方,第2言語second languageとは,異なる言語を用いる人びとで構成されるコミュニティにおいて共通のコミュニケーション手段とされる言語である。しかし,国際化の進展に対応し,国際社会の中に生きるために必要な資質を養うという視点に立てば,国際社会で共通語とされる外国語を第2言語,すなわち共通のコミュニケーション手段として学習し,理解力ばかりでなく発信力を育成することが外国語教育の目標となる。2008年に改訂された中学校学習指導要領の外国語科を例に取れば,外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深めること,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ること,聞く,話す,読む,書くなどのコミュニケーション能力の基礎を養うことの3点が目標とされる。文法や語彙などの知識の習得にとどまることなく,外国語でコミュニケーションできるための基礎となる能力として,聞く,話す,読む,書くという四つの技能をバランス良く獲得することが求められている。

【外国語教育の方法】 外国語の教授法は,おおむね三つの系統に区分されるだろう。一つは,伝統的な教授法であり,文法の解説と教科書の訳読を主たる技法とする文法訳読法grammar translation methodである。教科書に依存する伝統的な教授法であり,外国文化を吸収する手だてとして正確な訳読ができることを目的とする。この方法では,規範的な規則としての文法を操れること,単語をたくさん記憶していることをめざした指導が行なわれる。高等学校の読解を中心とした授業などでは文法訳読法が多く用いられている。文法訳読法では,外国語によるコミュニケーションの直接的な指導は行なわれず,将来において外国語を用いてコミュニケーションをする際の基盤となる能力として,文法の知識や語彙力の育成に力点がおかれている。

 二つ目は,「聞く」「話す」能力の育成を第1の目的として,聞き取りや文型の口頭練習を重視するオーディオリンガル法audio-lingual methodである。文法訳読法への批判として,「聞く」「話す」能力を直接的に育成する技法として考案された教授法である。この方法の背景には,構造言語学による外国語の分析と行動主義的学習理論の立場に立つ言語習得理論がある。行動主義の学習理論では,外国語もまた繰り返し練習による習慣形成によって習得されると考えている。そのために練習が重視される。練習は,構造言語学による分析に基づいて単純な文型から徐々に複雑な文型へと緻密に配置された教材に沿って行なわれる。典型的な授業は,その課の基本対話の導入に始まり,新出の文法事項や新出の単語の説明,それに続く新しい文型の説明,文型練習(単語の置き換えによるパターン練習など),補充練習,対話文の暗記が行なわれる。外国語は習慣形成によって習得されるという考え方を背景としているために,誤った習慣が形成されないように,発音や文法の誤りなどは厳しく修正され,つねに,正確な発音と文法的に正しい発話が求められる。この方法では,習得した文型がどのような場面で使用できるのか,暗記した対話どおりに会話が進まない場合にはどうしたらよいのかといった,実際のコミュニケーションに必要な能力が訓練されることはない。また,行動主義的な学習理論に立脚しているために,学習者は教師によって訓練される受動的存在となりがちである。

 三つ目は,教室で学習者に主体的なコミュニケーションを行なわせることを主たる技法とするコミュニカティブ・アプローチcommunicative approachである。この方法は,コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチングcommunicative language teaching(CLT)とよばれることもある。外国語によるコミュニケーション能力そのものを育成することが目的とされる。外国語を用いて有効なコミュニケーションを行なううえで必要な能力として,カナールCanale,M.とスウェインSwain,M.(1980)のコミュニケーション能力の定義がよく知られている。すなわち,コミュニケーション能力communicative competenceは,語彙や文法,音声,文字を使いこなすための文法能力,まとまりのある文章や会話を理解したり,構成したりするための談話能力,使用する文がその場にふさわしい一般的な表現であるかどうかを判断するための社会言語学的能力,コミュニケーションを円滑に進めるための方略を利用できる方略能力という四つの下位能力で構成されているという説である。このようなコミュニケーション能力の習得のために,教室で外国語を用いた主体的な言語活動を行なわせることが有効であるとするのが,コミュニカティブ・アプローチである。そのために,授業中に外国語を用いてコミュニケーションし,情報収集したり課題を解決したりするタスクが用いられる。コミュニカティブ・アプローチの授業で学習者に求められるのは,単語の記憶でも文型練習でもなくタスクの遂行である。したがって,タスクが学習者の興味や関心に即応している場合には高い内発的動機づけを期待できる。しかし,体系立った正確な文法知識の習得や正確な発音の習得には向かないといった批判もある。

【外国語教育の授業】 コミュニケーション能力の育成を目標とする外国語教育では,文法解説や文型練習を主たる技法とする授業から能動的な言語活動を重視した授業への変化が求められている。実際の授業では,具体的な教育目標や対象となる学習者の特性に応じて適切な方法を選択できることが重要となる。学習者が成人の場合は,すでに身につけている母語からの干渉のために学習がむずかしくなることや外国語学習に対する不安など不利な点をもつ。しかし,その一方で,発達した知的能力に依存する一般的な学習技能や,体系づけられた教材や言語学的な規則が利用できるという利点をもっている。一方,児童期の学習者の場合には,母語からの干渉や学習に伴う不安が少ないという点で成人の場合より有利である一方で,成人の場合に利用できるような一般的学習能力が十分に獲得されておらず,言語学的な規則を利用した学習も難しいことから,成人と同じ方法で外国語を習得することは困難であるとされている。そのため,小学校段階で外国語教育を行なう場合には,中学校段階で教える内容を前倒しするのではなく,児童期の特性を生かす必要がある。児童期の外国語教育では,発話よりも聴覚的理解を優先し,聞いて理解した事柄を体全体で表現させるような技法を用いたり,言語活動をゲームとして与えたりするなどの工夫も有効である。

 また,教室で言語活動を行なう場合,外国語であろうと母国語であろうと,他者を前にして自分の考えや意見を自由に述べても自我が脅威にさらされることのない,自己を表現しやすい教室の雰囲気を作ることも教師の役割として重要となる。 →第2言語習得 →バイリンガリズム →バイリンガル教育
〔中條 和光〕

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世界大百科事典内の外国語教育の言及

【フランス語】より

…しかし明治憲法の制定をきっかけにドイツ系の学問が盛んになるに及び,当初より英語優勢の教育界においてフランス語の占める相対的勢力はさらに減少した。このような英語,ドイツ語,フランス語の外国語教育における勢力関係は,根本的には覆されることなく今日に及んでいるが,この間明治・大正・昭和を通じて,特にフランス文学の研究や翻訳・紹介が活発に行われ,日本の文学界に大きな影響を及ぼしてきた事実は見のがせない。なお,第2次世界大戦後の学制改革に伴い,フランス語はドイツ語と並んで多くの新制大学で第2外国語として採用されるにいたり,また,種々の語学機関や放送,レコード,テープを通じての教育・学習が盛んになったことにより,フランス語学習者の数は戦前に比べ飛躍的に増大した。…

※「外国語教育」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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