外部評価(読み)がいぶひょうか

大学事典 「外部評価」の解説

外部評価
がいぶひょうか

学外有識者を評価者として行われる大学評価の一形態。大学や大学の各部署あるいはセンター等における教育,研究,社会貢献組織運営等の状況について評価を行う。大学等はその評価結果を事業の発展や改善に活用し,また社会への説明責任(アカウンタビリティ)として公表する。外部評価を広義で解釈すれば,自己評価以外の「他者による大学評価」全体を総称するが,一般的に自己評価および第三者評価以外の大学評価を指す場合が多い。第三者評価との大きな違いは,評価者および評価項目が評価対象機関自身によって選定されることにある。

[外部評価実施の目的,体制,内容,方法]

大学評価の基本的作業は自己点検・評価にあるが,この評価では判断が自学に都合のよい結果となる懸念もある。その欠点を補うため,自己点検・評価結果を外部者の視点から検証してもらうのが外部評価である。これによって,自己評価結果の妥当性と信頼性を担保すると同時に,大学が見いだし得なかった改善課題やストロングポイント(強み)を指摘してもらい,組織や事業の改善・発展に資することを目的とする。

 外部評価は全学で実施する場合もあれば,学部・研究科あるいは学科,課程,専攻単位で実施することもある。また,大学や学部に付属する教育研究支援組織やセンターでも行われる。このほか外部資金を得て実施される教育プログラムや研究プロジェクトについても,途中経過における進捗や運営の適切性,最終結果における費用対効果など事業の妥当性検証のために行われることもある。

 外部評価の特徴の一つは,大学や学部等組織自身が学外から評価者を選ぶところにある。選定にあたっては評価対象大学等の特性や社会的役割をよく認識している有識者や利害関係(ステークホルダー)に依頼することが多い。たとえば近隣大学の学長経験者や大学教員,自学の卒業生や同窓会関係者,地域社会の企業経営者や報道関係者,自治体や公共団体首長に準ずる主要人物,高等学校長,地域の医療や福祉に関与する有識者などが評価委員として選ばれる。

 外部評価にあたっての評価項目やその内容も,評価を受ける組織が設定する。認証評価機関が提示する評価基準や観点・項目を援用する場合もあれば,大学や学部等それぞれの特性や強調すべき事項を踏まえ,独自に設定することもある。評価項目は評価を受ける組織によって多様だが,一般的には教育研究に関する理念・目的,実施体制,内容と方法,事業成果,入学者受入れ,管理運営,財務状況,情報公開,質保証の取組み,学生や社会へのサービス,国際化などから取捨選択される。これら評価項目について自己点検・評価を行い,その結果を外部評価者がさらに検証・評価するのが通常である。実施時期の設定も評価を受ける組織の判断による。毎年,もしくは2~3年の周期で実施することもあるし,不定期のこともある。7年ごとの大学機関別認証評価周期の合間に組み込んで,認証評価の事前,または中間評価の位置づけで実施する事例も多い。

 外部評価の実施に法的義務はないが,認証評価では外部評価の実施有無やそれを踏まえた改善事例を確認する。また,競争的資金による教育プログラムや研究プロジェクトでは,外部評価による成果検証を事業採択や支援継続の条件とする場合もある。こうしたことから外部評価を実施する大学等もある。外部評価の結果は,評価報告書やウェブサイトで公開し,社会への説明責任の一端とする。

[第三者評価と外部評価]

第三者評価とは,評価対象組織と利害関係を持たない第三者機関によって行われる大学評価である。この評価では,第三者機関が評価委員を選定して評価委員会等を構成し,そこで大学等の教育,研究,社会貢献活動,国際交流,組織体制や運営状況などについての評価項目,評価基準(水準),評価方法を設定する。これに照らして各大学等は自己点検・評価を実施し,さらにその結果について第三者評価機関が選定した評価者が,客観的数値を示した根拠資料(エビデンス)を要求しながら検証評価を行う。これによって大学等の教育・研究の質保証や,社会貢献活動等の遂行状況,組織運営の健全性を評価し,必要があれば改善指摘を行う。第三者評価では,最終評価結果が期待する水準以上だった場合は何らかの適格認定(アクレディテーション)を行うことが多い。代表的な第三者評価として大学機関別認証評価がある。大学機関別認証評価は学校教育法109条2項,3項にもとづいて実施され,すべての大学は7年以内に1回,国から認証された評価機関(大学改革支援・学位授与機構,大学基準協会,日本高等教育評価機構)による大学評価を受けることが義務づけられている。認証評価などの第三者評価も広義の外部評価ではあるが,評価特性の違いから,通常は外部評価とは区別される。
著者: 大川一毅

参考文献: 山野井敦徳,清水一彦編著『大学評価の展開』(講座「21世紀の大学・高等教育を考える」第2巻),東信堂,2004.

参考文献: 川口昭彦『大学評価文化の展開―わかりやすい大学評価の技法』(大学評価・学位授与機構大学評価シリーズ),ぎょうせい,2006.

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android