翻訳|stakeholder
民間企業、学校や病院、NPOなどの団体、政府や地方自治体など、あらゆる組織の利害関係者をさすことば。ステークstakeとは「賭け金」の意味で、ステークホルダーとは競馬の馬主の集まりを意味したが、その後、広く利害関係者をさすようになった。民間企業の場合も、持続的発展を目ざす必要があるため、株主などの投資家だけでなく、従業員、顧客、取引先、金融機関、債権者、地域社会、自治体、政府などがステークホルダーに含まれると考えられている。
多国籍企業の登場・増加によって、営利団体である企業が環境、社会に与える影響は国境を越え地球規模に拡大した。それぞれの国の法律遵守や従来の企業の社会的責任(有用な財・サービスの提供、雇用の創出、納税など)をいうだけでは、企業活動のもたらす負の結果(地球温暖化、環境破壊、地域コミュニティーの崩壊など)をカバーしきれなくなった。こうした状況を打開し、持続的発展を確保すべく考えられたのが、ステークホルダーとアカウンタビリティー(説明責任)という概念を取り入れたCSR(企業の社会的責任、Corporate Social Responsibilityの略)である。2000年に経済協力開発機構(OECD)が多国籍企業の行動指針を改訂し、2001年に欧州委員会はCSR推進を提案、2002年にはアメリカでSOX法(企業改革法)が成立した。
日本でも企業などに対しこれまで以上の情報開示や説明責任を義務づける金融商品取引法などの法令整備が進んだ。株式市場では、社会的責任への対応を重視する「社会的責任投資」(SRI)を尊重する考え方が普及し、従来のIR(インベスター・リレーションズ=企業の投資家向け広報活動)よりも対象を広げたSR(ステークホルダー・リレーションズ)に力を入れる企業も増えている。
[編集部]
利害関係者のことで,大学に関しては産業界,行政,NPO,大学への進学希望者とその保護者などが具体的に想定される。大学の社会的役割や責任に対する認識の高まりにより,大学とステークホルダーとの関係性が重要視されるようになった。2011年(平成23)4月から教育情報の公表が義務化されるなど,ステークホルダーに対する説明責任が大学に求められている。さらに,大学ポートレートの整備に関する議論の過程においても,ステークホルダーへの情報発信の強化がその意義として強調されている。
他方で,ステークホルダーは情報の一方的な受け手にとどまらない。たとえば,文部科学省は地域や分野に応じて大学間が相互に連携し,社会の要請に応える共同の教育・質保証システム構築の支援を目的として,2012年より大学間連携共同教育推進事業(日本)を展開している。同事業においては,ステークホルダーとの課題の共有や教育の実施,評価などが事業推進の主要な柱として掲げられている。また,大学のガバナンス改革が進行するなかで,大学経営に関わる審議機関や外部評価委員会などの構成員に産業界や行政関係者を登用し,ステークホルダーの意向を積極的に取り入れていこうとする動向も伺える。
著者: 橋場論
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