夢中問答集(読み)むちゅうもんどうしゅう

精選版 日本国語大辞典 「夢中問答集」の意味・読み・例文・類語

むちゅうもんどうしゅう‥モンダフシフ【夢中問答集】

  1. 仏教書。三巻。夢窓疎石述。暦応二年(一三三九以後成立康永元年(一三四二)跋。足利直義の問いに答えて禅の本旨修行の心得を説いたもので、社会的政治的な問題にも言及する。

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改訂新版 世界大百科事典 「夢中問答集」の意味・わかりやすい解説

夢中問答集 (むちゅうもんどうしゅう)

夢窓疎石述の法話集。《夢中問答》ともいう。全3巻。夢窓が足利尊氏の弟直義(ただよし)の問いに対し,仏教の本質,俗信,そして禅の本旨などについて,93項目にわたって平易懇切に答えたものである。すでに夢窓が生存中の1344年(興国5・康永3),若狭守護にも補任されたことのある大高重成が,南禅寺竺仙梵僊(じくせんぼんせん)の跋文を得て開版した。禅の玄旨を簡明に説示しているところから,参学の徒の手引きとして広く利用され,室町時代から江戸時代にかけて,幾度も開版された。上巻は〈福を求むる心〉から〈魔境に入らぬ工夫〉まで23項目,中巻は〈本分の大智〉から〈臨終の相〉まで37項目,下巻は〈本分の田地〉から〈真実人に示す法門〉までの33項目からなっている。念仏門の小乗性を批判している点があったので,浄土宗の僧澄円(1283-1372)は《夢中松風論》全10巻を著して反論した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「夢中問答集」の意味・わかりやすい解説

夢中問答集
むちゅうもんどうしゅう

夢窓疎石(むそうそせき)が足利直義(ただよし)の問いに答えた法話集。3巻。『夢中問答(むちゅうもんどう)』ともいう。全編93章の仮名交り文の問答集。在俗のまま禅を志す者や女性たちに見せたいという直義の意を受けて、1342年(康永元)9月の竺仙梵僊(じくせんぼんせん)の跋(ばつ)文と1344年の再跋をつけて、足利氏に仕え、疎石に学んだ大高重成(おおたかしげなり)が出版。五山版(ござんばん)のほか浄因寺(じょういんじ)版、元和(げんな)版、寛永版、正保(しょうほう)版、文政版などがあり、岩波文庫などにも収録。『古典史料類従5』は五山版の複製を所収。

[今枝愛眞]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「夢中問答集」の意味・わかりやすい解説

夢中問答集
むちゅうもんどうしゅう

足利尊氏,直義の兄弟質問に答えてなされた夢窓疎石の法語を集録したもの。3巻。興国5=康永3 (1344) 年刊。問答体で,平明な文体のかな書きにより仏教の教えや禅の眼目について説いている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「夢中問答集」の解説

夢中問答集
むちゅうもんどうしゅう

室町前期,夢窓疎石の著書
『夢中問答』ともいう。1344年刊。3巻。足利直義 (ただよし) に対し禅について80余項目にわたり懇切丁寧に説いたもの。平易ながら深妙な禅の精神を示し,戦争の罪悪と人民への善政を強調した。

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