正しい法を説く言葉の意で,祖師,高僧などが仏の教えを簡潔に表現した詩文のことである。唐宋間に仏家が韻語をもって演説したことに始まるので,おおむね詩を含む韻文であるが,のちに散文の法語,また日本では仮名文の法語も行われた。茶道と墨跡との関連により,今日,特に喧伝されるのは禅宗における法語である。禅宗は本来,〈以心伝心,不立文字〉を建て前とする宗派であるが,宋代以後,禅僧が士大夫社会と交渉をもち文人趣味を取り入れ,詩文や書画によって悟りの境地を表現する風が高まると,多くの高僧たちがさまざまな形式の法語を説き示すにいたった。仏事における住持の説法,師が参学の衆徒に説き与える法語など,そのおもなものは次の通りである。〈上堂法語〉は歳旦,結夏,解夏,冬至の四節などに,住持が定期的に行う正式の説法。大参ともいう。〈小参法語〉は住持がどこでも臨時に行う小規模の説法。家訓ともいう。〈秉払(ひんぽつ)法語〉は正式の住持に代わり,払子(ほつす)を秉(と)って主席につき,大衆に説く法語。〈小仏事法語〉は拈香,点眼,掛額,安座,祖堂入牌,下火(あこ),起骨,掩土など,立ったままで行う小規模の仏事法語。立地法語とも呼んでいる。〈示衆法語〉は仏事には関係ないが,参学の衆徒に対して師が説き与える法語。垂示ともいう。勉学の徒を激励する警策,参禅修行ののち師のもとを辞去する弟子への送行の法語,進道語などもこの種の法語である。
執筆者:角井 博
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本来は仏法の正しい道理にのっとって語られたことばの意。日本では、漢文による述作に対し、仮名文による仏教の述作をいう。仏法を日本の現実や日本人の生活に即してとらえ、日本語で仏法を語ろうとしたとき、仮名文による法語が成立した。仮名法語のもっとも早いものに、源信(げんしん)作と伝える『横川(よかわ)法語』があるが、盛んにつくられるようになったのは、民衆を対象に仏法が説かれるようになった鎌倉時代以後である。代表的作品には、法然(ほうねん)の『一枚起請文(いちまいきしょうもん)』、親鸞(しんらん)の語録『歎異抄(たんにしょう)』、一遍(いっぺん)の消息法語を含む『一遍上人(しょうにん)語録』、道元(どうげん)の『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』、日蓮(にちれん)遺文、『栂尾明恵(とがのおみょうえ)上人遺訓(いくん)』、『一言芳談(いちごんほうだん)』、無住がとくに婦人に示した法語『妻鏡』、証賢(向阿(こうあ))の『三部仮名鈔(さんぶかなしょう)』、蓮如(れんにょ)の『御文(おふみ)』などがある。
[伊藤博之]
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…これも墨跡の類に入る。(2)文章形式のもの 韻文の形式になる法語,疏が多く,のちに散文のもの,また日本では仮名文の法語も行われた。(a)法語 さまざまな仏事における住持の説法,師匠が参禅の衆徒に説き与える法語,辞去する弟子に与える送行の法語,さらに衆徒を激励するための警策,進道語などがある。…
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