日本大百科全書(ニッポニカ) 「大山詣り」の意味・わかりやすい解説
大山詣り
おおやままいり
落語。江戸の人々が大山参詣(さんけい)に出かけた。道中で酒を飲んで暴れた者は坊主にするという約束だった。帰りに神奈川宿で熊(くま)公が酔っぱらい、2階でいびきをかいて寝ているところを、約束だといって丸坊主にされる。翌朝早く、まだ寝ている熊公を置き去りにして皆は行ってしまう。目を覚まし丸坊主に気づいた熊公は、一策を案じ、通り駕籠(かご)に乗って、ほかの者たちよりも早く江戸に帰る。早速ほかの連中の女房を集め、帰途船がひっくり返って全員溺死(できし)し、自分1人助かったので、皆の菩提(ぼだい)を弔うため坊主になったという。すっかり信用して悲しんだ女房連中も皆、坊主になる。そこへ一行が帰ってくる。年長者がめでたいという。「なにがめでてえんだ」「お山は晴天、家へ帰りゃ皆お毛が(怪我(けが))なくっておめでたい」。上方(かみがた)では「百人坊主」とよんでいる。昔の講中の大山参詣風景を伝える好資料でもある。
[関山和夫]