山形県飽海郡遊佐町,鳥海山上に鎮座。旧国幣中社。正称は鳥海山大物忌神社。吹浦と蕨岡に口ノ宮がある。倉稲魂(うかのみたま)神と同神格という大物忌神をまつるが,本来はこの地方第一の高峰それ自体を対象とした自然神崇拝で,山岳仏教が関係して修験道の聖地となった。ことに平安時代には噴火などを神異とし,蝦夷の乱や東シナ海の海賊の寇など兵変に関連して国家から深い崇敬を受け,神階は正二位に昇った。吹浦口ノ宮である〈月山大物忌両神社〉は出羽国の一宮で,《延喜式》では名神大社。中世には鎌倉幕府や南朝方勢力に,近世には江戸幕府や最上氏,酒井氏に崇敬され,種々寄進をうけた。例祭は吹浦は5月8日,蕨岡は5月3日。
執筆者:新野 直吉
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…《三代実録》貞観13年(871)の条には,噴火で流出した溶岩泥流の中に大蛇2匹とそれに従う無数の小蛇が見られたとあり,大物忌神の本体は蛇体であったことを思わせる。山上の大物忌神社は出羽国一宮として崇敬されたが,吹浦(ふくら),蕨岡(わらびおか)(ともに山形県飽海(あくみ)郡遊佐町),矢島(秋田県由利郡矢島町)などの登山口には里宮が設けられ,中世以降それぞれ鳥海修験の一派をなした。彼らはその檀那場を配札や治病の加持祈禱をして回ったほか,番楽と称する舞楽を伝えて歩いた。…
※「大物忌神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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